暗号資産(仮想通貨)のアルトコインは先週、大幅下落に見舞われた。これを受け、投機家が市場に再び戻ってくるのか不透明な状況になっている。

トランプ米大統領が10日、中国に対して11月1日から100%の追加関税を課すとともに重要ソフトウエアの対中輸出規制を導入すると発表した後にビットコインは13%下落した。

しかし、アルトコインはさらに大きな打撃を受け、その多くは一時的に反発する前に最大で80%も下落した。ビットコインとイーサリアムを除く幅広いデジタル資産を指すアルトコインには、ソーシャルメディアのトレンドに便乗したミームコインも含まれる。柴犬の「ドージコイン」や漫画に出てくるカエルの「ぺぺ(PEPE)」、実在するカバ「ムーデン」がその幾つかの例だ。

コインマーケットキャップによると、今年初めに宣伝されたトランプ氏のミームコインは10日、37%下落。トランプ氏の分散型金融(DeFi)プロジェクト、ワールド・リバティ・ファイナンシャルが発行するトークン「WLFI」も同様の下げ幅を記録した。

10x Researchは、今回の急落で失われた3800億ドル(約57兆9000億円)のうち約1310億ドルはアルトコインが占めたと分析している。アルトコイン市場は流動性が希薄で、投機性やデイトレーダーの過度な宣伝に依存してきた。

アルトコインの今後には疑問の声も上がっている。トレーダーやマーケットメーカーの間では、買い手の減少やリスク回避姿勢の強まりで市場の構造的な支えが失われていると見る向きもある。

ビットコインやイーサリアムに比べて取引量が少ないにもかかわらず、アルトコインは市場での存在感を増していた。コインマーケットキャップによれば、仮想通貨の市場全体に占めるビットコインの割合は7月の約65%から現在、58.5%にまで低下している。

この変化は重要だ。歴史的にビットコインの市場シェアは市場全体が大幅下落する前に急落する傾向にあるためだ。例えばビットコインの市場に占める割合は2019年の70%から22年後半には38%まで低下した。これは前回の相場下落の直前だった。その後、より安全なデジタル資産とみなされるビットコインに資金が戻り、価格は再び上昇した。

AirdropAlert.comを運営するトレーダー、モーテン・クリステンセン氏は「アルトコインの問題は、さらに上昇する可能性があるものの、1日で50%下落したり1週間で90%下落したりすることもある点だ。終わりが近い可能性が高まっているサイクルの終盤に自分のポートフォリオでゲームするつもりはない」と話す。

今回、デイトレーダーを襲った損失の規模を踏まえ、仮想通貨マーケットメーカー(値付け業者)であるウィンターミュートのエブゲニー・ガエボイ最高経営責任者(CEO)は「アルトコイン市場は縮小する」と予言している。

 

原題:A $131 Billion Crypto Crash Has Traders Fearing Lasting Damage(抜粋)

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