連休明け14日の日本市場では、自民党と公明党の連立解消に加え、米トランプ政権の中国に対する関税政策への懸念が重しとなり、株式相場は大幅な下落が予想される。国内の政治不安から債券と円相場も不安定な展開となりそうだ。

自公の連立政権解消を受け、首相指名の行方や新政権の枠組みが見通しにくくなっている。高市早苗首相誕生を前提とした財政・金融政策への期待で先週、日本株を最高値まで押し上げた「高市トレード」が、ここにきて一部巻き戻しが進む可能性が高まっている。

米関税懸念の再燃も株式相場の重しになり得る。トランプ大統領は10日、11月1日から中国製品に100%の追加関税を課す方針を示し、特定の米国製ソフトウエアの輸出も制限すると発表。これを受けて10日の米株式相場は急落した。その後トランプ氏が米中協議に前向きな姿勢を示し、米株は13日に反発したが、市場の動揺は完全には収まっていない。

ピクテ・ジャパンの田中純平投資戦略部長は、景気刺激を重視した経済政策「サナエノミクス」実現の可能性は大きく後退したと指摘。「高市トレード」も巻き戻しが避けられず、日本株は大幅に下落するとみる。

米シカゴ先物市場(CME)の日経平均先物(円建て)の13日清算値は4万7015円と日経平均株価の10日終値4万8088円に比べ1073円安だった。

セクター別では、前営業日終値比での円高進行や米関税懸念から、自動車や機械の輸出関連株、米国市場で大きく売られた人工知能(AI)関連を中心に下げそう。高市氏の政策期待から上昇していた防衛・ハイテク関連株にも調整が入る可能性がある。

野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは「公明党の連立離脱を受けて首相指名選挙まで日本株は様子見ムードが続きやすい。日経平均は自民党総裁選前の4万5000円が当面の下値めどになりそうだ」と話した。

債券、円

国債市場は、公明党の連立離脱による政権不安や財政懸念と、米中摩擦の再燃を背景としたリスク回避の動きという相反する要因に挟まれている。

ロンバード・オディエ・シンガポールのシニアマクロストラテジスト、ホミン・リー氏は、米中間の緊張再燃による世界的なリスク回避の動きは、日本の国債市場に一定のプラス効果をもたらす可能性があると述べた。ただ新たな連立体制を構築するため、より拡張的な予算編成が行われる可能性が高く、「財政不透明感が高まる現状では、日本国債が他市場を上回るパフォーマンスを示すのは難しい」と話した。夜間取引で国債先物は上昇している。

SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、14日の債券市場は前週末の米長期金利低下を受けて5-10年を中心に金利が低下(価格は上昇)すると予想する。日本銀行は政治とのコミュニケーションが一段と取りづらくなることから、10月の利上げの可能性は低下しているとみる。

混沌としている政治情勢については、高市氏の首相就任をメインシナリオとした上で、自公連立解消を受けて予算編成が難航し、財政拡張が難しくなると想定する向きが増えていると語る。一方で、玉木国民民主党代表が首相になるシナリオも完全には否定できず、先行き内閣不信任案の提出や解散総選挙の可能性も意識され、金利にプレミアム(上乗せ金利)が乗り続けると指摘する。

15日に予定される20年債入札では、最近の不調な結果を受けて、需要の強さに一段と注目が集まる。

ウェルズ・ファーゴのアジア太平洋(APAC)チーフストラテジスト、チドゥ・ナラヤナン氏は、市場の織り込み以上の財政刺激策への懸念は長期金利の急上昇とベアスティープニング(長期金利の上昇幅が短期金利よりも大きくなる状況)を招く恐れがあると指摘する。

日銀は政治的不透明感の高まりから10月の会合で利上げを見送り、状況の明確化を待つ可能性もあるとナラヤナン氏は述べた。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では、13日時点で10月利上げの確率が約17%織り込まれている。

円相場は、政治的不透明感による日銀の利上げ後ずれ観測と、対中関税懸念に伴うリスク回避の動きが交錯し、方向感を欠いた展開になりそうだ。過去半年間の流れでは円安基調が続くが、短期的には上下に振れやすい局面が予想される。

円相場は10日に対ドルで一時1%以上上昇し151円前半まで円高が進んだものの、13日には152円前半まで反落した。

ピクテの田中氏は、政策実現の不透明感が高まり、基本的には円高圧力がかかりやすいとする一方で、連立や政策協力が実現しても財政拡張的な政策を取らざるを得ない可能性が残り、「一方的に円高が進むとは想定しづらい」と話した。

(株式や債券のコメントなどを追加して更新します)

--取材協力:我妻綾、グラス美亜、ジョン・チェン、長谷川敏郎.

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