(ブルームバーグ):13日の米株式相場は反発。米国と中国が通商協議の継続に前向きな姿勢を示したことや、中東情勢の緊張緩和が好感された。人工知能(AI)関連株の上昇も相場を押し上げた。円は対ドルで下落し、一時1ドル=152円台半ばを付けた。米国債の現物市場はコロンブスデーの祝日で休場だった。
S&P500種株価指数は5月以来の大幅高となった。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は5%近く上昇。ブロードコムは約10%急伸した。OpenAIはブロードコムと、AI向けカスタム半導体とネットワーク機器の共同開発で複数年にわたって協力することに合意した。
貿易摩擦緩和の兆しが見られ、投資家がハイテク株バブルへの懸念を払拭(ふっしょく)する中、押し目買いの姿勢が依然として根強いことが示された。米企業の決算シーズンが本格化し、14日から大手銀行が相次いで業績を発表する。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「旺盛な投資意欲は続いている。今回の相場回復が持続すれば、個人投資家は簡単には動揺しないとの見方が一段と強まるだろう。押し目買いが引き続き有効であることを示す新たな証左になる」と述べた。
トランプ米政権は、中国との新たな貿易摩擦を沈静化させるための合意に前向きな姿勢を示した。中国商務省も未解決の問題を解決するため一段の協議を呼びかけた。

パレスチナ自治区ガザでの戦闘停止も市場センチメントの改善に寄与した。トランプ大統領は、ガザの将来を協議する会議に集まった各国・地域の首脳らに対し、米国主導のイスラエルとハマスの停戦を恒久的な和平へとつなげるよう呼びかけた。トランプ氏は今回の合意について、戦禍に苦しむ地域の「新たな始まり」だと強調した。

ウォール街の大手銀行は、堅調なトレーディング業務とディール活動の回復を背景に、7-9月(第3四半期)決算も再び好調となりそうだ。銀行株はここ数週間に急伸している。トランプ政権下で規制環境が緩和され、企業のM&A(合併・買収)などの取引が活発化し、アドバイザリー業務の収益が拡大するとの期待が背景にある。
米株式相場が過去最高値圏で推移する中、期待に届かない業績を示す企業に対する視線は一段と厳しくなっている。投資家はAI関連投資の持続性や、高水準の関税が企業に及ぼす影響など、幅広い課題について安心材料も求めている。
トレジャリー・パートナーズのリチャード・サパースティーン氏は「今決算シーズンは、強気相場の全体的な健全性を見極める上で重要だ。AIやデータセンター向け設備投資がどの程度利益につながっているのかを巡り疑問が強まる中、投資家はテクノロジー企業の業績を精査するだろう」と述べた。
ロリ・カルヴァシナ氏率いるRBCキャピタル・マーケッツのストラテジストは、7-9月期に企業利益の勢いが鈍化すれば、米株式相場の上昇は一服する可能性が高いとリポートで指摘。「前回の決算シーズンで見られた業績に対する強い楽観が維持できなければ、主要株価指数がごく近い将来に調整局面を回避するのは難しいだろう」と記した。
モルガン・スタンレーの米国株チーフ・ストラテジストのマイケル・ウィルソン氏は、米国と中国の貿易摩擦が11月1日までに解消されなければ、米国株は最大11%下落するリスクがあるとの見方を示した。
外為
外国為替市場ではドルが上昇。前週末に下落した分の一部を取り戻す格好となった。10日にトランプ米大統領が中国に対する新たな大幅関税を警告し、ドル売りを誘っていた。この日は米国債の現物市場が休場となる中、商いは薄かった。
円は対ドルで下落。一時は0.8%安の152円45銭まで売られた。その後もおおむね152円台前半で推移した。ヘッジファンドが円売りの動きを再開した。
ベッセント米財務長官は、トランプ大統領と中国の習近平国家主席による韓国での会談実施を引き続き想定していると述べた。

フィラデルフィア連銀のポールソン総裁は、年内にあと2回の0.25ポイント利下げを実施するのが望ましいとの考えを示唆した。関税による消費者物価上昇の影響は度外視するべきだとの立場を示した。
全米企業エコノミスト協会(NABE)の調査によると、エコノミストは今年と来年の米経済成長率見通しを引き上げた。一方、雇用の伸びについては引き続き鈍化を見込んでいる。
原油
ニューヨーク原油先物相場は3営業日ぶりに反発。ただ1バレル=60ドル未満の水準にとどまった。原油の2大消費国である米国と中国の間で新たに生じた貿易摩擦を巡り、トランプ政権は摩擦緩和に向けて中国との取引にオープンな姿勢を示した。
ウェストテキサスインターミディエート(WTI)原油先物は、10日には4.2%安と、5月以来の大幅安となっていた。トランプ政権は同日、11月1日から中国に対して100%の追加関税を課すとともに、すべての重要ソフトウエアに対中輸出規制を導入すると発表していた。
ストーンXの市場アナリスト、ラザン・ヒラル氏は、関税に関する報道が原油市場に再び弱気の圧力をかけていると分析。その上で、「2025年には、こうした関税を巡る摩擦が短期の需要ショックとして作用し、その後により望ましい貿易合意や景気回復への道を開くケースも見られた」と述べた。
BOKファイナンシャルのトレーディング担当バイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「中国との貿易問題は合意に至るまで不安定な状態が続くと市場ではみられており、それが短期的に原油相場の重しとなる可能性がある」と分析。一方で、「WTI原油が60ドルを下回る水準では、掘削リグの稼働数の減少が続き、結果として米国の原油生産量も減ることになるだろう」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は、前営業日比59セント(1%)高の1バレル=59.49ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は0.9%上昇の63.32ドル。
金
金相場は続伸。スポット価格は一時1オンス=4115ドルを上回り、過去最高値を更新した。週ベースでは前週まで8週続伸となっている。
金相場はこれまで、中央銀行による購入や上場投資信託(ETF)の保有増加、米利下げが支えとなる形で上昇。さらに米中貿易摩擦の再燃や米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性に対する懸念、米政府機関の閉鎖といった要因も、安全資産としての需要を後押ししている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時14分現在、前営業日比80.16ドル(2%)高の1オンス=4097.95ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は132.60ドル(3.3%)上昇の4133ドルちょうどで引けた。
原題:Stock Buyers Drive Biggest S&P 500 Rally Since May: Markets Wrap(抜粋)
Stock Buyers Power Best S&P 500 Rally Since August: Markets Wrap
Dollar Climbs as Traders Gauge US-China Tariff Risk: Inside G-10
Oil Holds Below $60 as Trump Softens Tone on China Trade Deal
Silver Roars Higher as Short Squeeze Rocks the London Market
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.