各国・地域の中央銀行当局者は既に貿易摩擦や公的債務の拡大を不安視しているが、来週には新たな懸念に直面することになる。市場急落のリスクだ。

人工知能(AI)関連の株式バブルが近く崩壊しかねないとの警告が相次ぐ中、世界の政策当局者と財務相は、国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会が開かれるワシントンに集まる。

IMFのゲオルギエワ専務理事

IMFのゲオルギエワ専務理事は8日の講演で、今後数日間の議論のテーマを先取りする形で金融安定を巡るリスクを認めた。

「バリュエーション(株価評価)は25年前のインターネット熱狂期の水準に向かっている」とし、「もし急激な調整が起きれば、金融環境の引き締まりが世界の成長を押し下げ、脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにし、特に新興国にとって厳しい状況をもたらしかねない」と警告した。

この発言は、2000年10月のIMFの見解よりも踏み込んだ内容と言える。当時、世界経済見通し(WEO)は株価評価が「依然として高水準にある」とし、「無秩序な形で」不均衡が解消に向かう可能性に言及していた。その数カ月後に売りが加速し、米連邦準備制度は0.5ポイントの利下げを余儀なくされた。

トランプ米大統領が再び中国に対する追加関税賦課を表明して株価が下落する以前から、当局者の間では不穏な類似点が指摘されていた。

イングランド銀行(英中央銀行)は「市場で急激な調整」が起きるリスクを警告し、欧州中央銀行(ECB)当局者も懸念を表明した。オーストラリア準備銀行(中央銀行)も今月、脆弱性に言及した。

 

こうした懸念は既に膨らんでいた。ECB当局者は約1カ月前の政策委員会会合で「突然かつ急激な価格調整」のリスクに関する報告を受けた。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長も9月に市場が「高く評価されている」と述べていた。

10月14日にはIMFの国際金融安定性報告書(GFSR)が公表される。2000年にはなかった報告書だが、今回は例年以上に注目を集めそうだ。WEOの最新版も発表される。

また、IMF会合に出席する主要7カ国(G7)および主要20カ国・地域(G20)の財務相の声明にも目が向けられる見通しだ。各国・地域の政策当局者の発言も注視されるだろう。

このほか、中国とインドの貿易と消費者物価データ、英国の賃金と国内総生産(GDP)統計、さらにストックホルムで13日に予定されるノーベル経済学賞の発表なども注目材料となる。米国ではパウエル議長が14日、経済と金融政策の見通しについて講演する。

原題:Stock Bubble Dread Grips Central Bankers: Eco Week (Correct)(抜粋)

--取材協力:Vince Golle、Swati Pandey、Robert Jameson、Monique Vanek、Mark Evans、Laura Dhillon Kane、Cecile Daurat、Beril Akman.

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