10日の日本市場では、株式が大幅に下落した。自民、公明両党の連立政権の行方を見極めたいとして売り注文が優勢だった。連立解消と伝わると、日本株先物は海外市場で下げを拡大している。

史上最高値を前日に更新した株式は、政権の形が政治情勢や政策に影響するとして電機や銀行を中心に売りが先行した。相場過熱感や米株安、3連休前も買い見送り要因。債券は中長期債が上昇(金利は低下)した。自民の高市早苗総裁と公明の斉藤鉄夫代表は午後1時45分から連立を巡り協議、株式の取引終了後に公明が自民との連立政権から離脱の方針と報じられ、海外市場で日経平均先物は下げ幅を広げ、円は対ドルで一時上げ幅を拡大した。

高市早苗氏

高市氏の総裁選勝利を受けて始まったこの週の株高、円安、債券安という「高市トレード」が一段落した形になった。市場が予想する日本銀行の10月利上げ確率は低下が鮮明で、インフレ懸念も加わり暗号資産(仮想通貨)ビットコインや金は最高値水準にある。財政・金融政策を左右する連立解消や米政府機関閉鎖の行方を金融市場は見守っている。

経済・金融市場の情報を提供するマーケットコンシェルジュの上野泰也代表は10日付リポートで、金融市場は自公連立崩壊は織り込んでいないと協議結果が判明する前に指摘していた。自民単独政権で公明が閣外協力に転じた場合、政権の安定度は一層低くなり各種政策の実現性に疑問符が付き、高市政権は短命に終わる可能性があるとした。

株式

東京株式相場は反落。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落を受けて、日本市場でも割高感から半導体関連株を中心に利益確定売りに押された。

大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、東証プライムがほぼ全面安と騰落数が極端になっていると指摘。「高値警戒感も強かったため、前場で売られやすい地合いだったが、それだけにしては傾き過ぎている」と話した。

セブン&アイ・ホールディングスは、国内コンビニ事業の不振から通期業績予想をアナリスト予想を下回る水準に下方修正したことを受けて下落した。一方で「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは5期連続で過去最高益を更新する予想を示して上昇した。

自公連立解消を受けてシンガポール市場で日経平均先物は下げ幅を拡大した。高市氏の自民党総裁就任で期待が高まっていた半導体など経済安全保障に関わる政策や防衛費の増額などが実現しにくくなるとの見方がある。

MCPアセット・マネジメントの大塚理恵子ストラテジストは、公明の連立離脱表明を受けて、日経平均は総裁選前の4万5000円まで下落する可能性があると述べた。今後の政権運営が難しさを増したことは間違いなく、米政府閉鎖が長引いており、悪材料が重なると付け加えた。

SMBC信託銀行の山口真弘投資調査部長も、週明けの日経平均は4万6500円くらいまで下げ余地があると話した。これまで日本株は高市自民総裁の政策期待を背景に、実現可能性を度外視して上がってきたとしている。

為替

外国為替市場の円相場は対ドルで152円台に上昇している。公明党が自公連立離脱の方針と伝わり、高市トレードの巻き戻しから円が買い戻された。

ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは「想定外でリスクオフの円買いもあり、円が買い戻されているが、本来は円買い材料ではない」と述べた。「政治的な混乱でフランスのようなことになるとむしろ円安要因だろう」と言う。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストも、公明との連立解消で自民は野党と連携せざるを得ず、財政拡張の思惑から円売りが強まる可能性があると予想した。

連立解消報道を受けて円は対ドルで152円39銭まで上昇した後、報道前の水準に戻っている。

債券

債券相場は中長期債が上昇。自公連立の先行きに不透明感が強まる中、連休を前にしたポジション調整の買いが入った。

自公連立解消との報道が伝わった後、リスク回避で債券が買われている。長期国債先物12月物は一時10日の終値比26銭高の136円16銭まで上昇した。

三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、自公連立解消で高市自民党総裁の首相就任の可能性が低下したと指摘した上で、日銀の利上げが進みやすくなり長期金利(新発10年債利回り)は年内に1.85%まで上昇するとの見方を示した。

東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストも、高市自民総裁が首相に就任する場合も、野党が結集して玉木雄一郎国民民主党代表が首相になる場合も、財政拡張の可能性がこれまで以上に高まり、金利は上昇するとの見方を示した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:横山桃花、堤健太郎.

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