ニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで6営業日続落した。ただ、午前の取引では円が一時上昇に転じる場面があった。自民党の高市早苗総裁が自身の経済政策に関して、行き過ぎた円安を誘発するつもりはないと述べたことに反応した。

円は高市氏の発言を受けて、一時152円14銭まで買われた。だが、円買いの勢いは続かず、その後は再び1ドル=153円台前半まで押し戻された。財政拡張・金融緩和路線の高市氏が総裁選に勝利して以降、円は下げ基調が続いている。

ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏(ロンドン在勤)は「市場はこれまでのところ、高市氏がハト派姿勢を後退させたと受け止めている」と指摘。「これは事実上、高市氏による口先介入だ」と語った。

みずほインターナショナルの欧州・中東・アフリカ(EMEA)マクロ戦略責任者、ジョーダン・ロチェスター氏は「高市氏は可能な限り中立を保とうとしているが、市場は同氏のこれまでのスタンスを知っている」と指摘。「そのためドル売り・円買いに戻る前に、政府が利上げについてどう考えているのか、一段と明確な見解を市場は求めている」と述べた。

ドル指数は続伸。早い時間帯には、年内の追加利下げをめぐるニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の発言に反応して下げていたが、その後は上昇に転じた。

マッコーリーのティエリー・ウィズマン氏は株式相場の上昇や金価格急騰といった状況を踏まえると、今月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げ確率を約95%と市場が織り込んでいるのは行き過ぎだと指摘。「FOMC議事要旨によれば、9月中旬時点のFRB当局者はそれほどハト派的ではなかった。さらにその後、非公式のインフレ指標は物価上昇の鈍化ではなく、むしろ加速を示している」と9日付のリポートに記した。

株式

S&P500種株価指数は反落。相場に過熱感が出るなか、目先の調整を見込む声も広がっている。

「AI銘柄やハイテク株への熱狂が相場を一段高へ導いているが、短期的に過熱した銘柄には注意を払うことが賢明だろう」と、パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は述べた。

同氏によれば、株高の裾野の広がりには息切れの兆しが見え始めており、投資家の関心が次の決算シーズンへ移るのに伴い、株式市場は値固め局面に入る可能性がある。

トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー共同最高投資責任者(CIO)は、「市場の一部では過熱感がみられるものの、全体的な投資家心理はまだ過度の楽観には至っていない」と指摘。その上で「本格的な調整局面が長く訪れておらず、市場は予想外の悪材料に敏感になっている」と述べた。

AIトレードが今後どこまで相場を押し上げられるのかをめぐる議論も、このところ活発になっている。

S&P500種は小反落

ニュースレター「ザ・セブンズ・リポート」のトム・エッセイ氏は、「AIはまだバブルではない。少なくとも、バブル崩壊が差し迫っているとは考えにくい」と指摘。「これは設備投資バブルだ。AIインフラにこれほど多くの資金が投じられ(さらに巨額の投資が約束され)、それが米経済の重要な一角を占めるようになり、数年にわたる強気相場の最大の原動力となっている」との見方を示した。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は「AIブームが本格化して以来、バブルを警告する声は常に存在してきた」と指摘。「急ピッチな上昇後に調整局面が訪れても不思議ではないが、株式市場の上昇は堅調なファンダメンタルズに支えられており、それが今後も相場を下支えするとみている」と述べた。

「AIバブル論が的外れである主な理由の一つは、主要プレーヤーが依然として高い収益力を維持している点にある」と指摘するのは、モルガン・スタンレーのウェルス・マネジメント部門で市場調査・戦略を統括するダニエル・スケリー氏だ。「利益も事業モデルも脆弱だった25年前のドットコム企業とは異なる」と述べたうえで、「もっとも、相場が調整局面を免れるわけではない。投資家は優良な配当成長株に目を向けるのも一案だろう」と付け加えた。

国債

米国債相場は下落。10年債利回りは約3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。

この日に行われた30年債入札(220億ドル規模)では、プライマリーディーラーの落札比率が過去最低を記録した。20年にわたる低下傾向が一段と鮮明になった。

同入札では、プライマリーディーラーによる落札は全体の8.7%にとどまった。2006年以降のデータで最も低く、これまでの最低記録である9%を下回った。

ブルームバーグ・インテリジェンスのウィル・ホフマン氏によると、今回の30年債入札は「底堅い」需要がみられたという。これがプライマリーディーラーの落札比率が低水準となった一因とみられる。

原油

ニューヨーク原油先物相場は小幅安。中東情勢の緊張緩和にトレーダーの関心が集まる一方、金融市場全体で慎重姿勢が強まった。

イスラエルとイスラム組織ハマスは、停戦ならびにハマスが拘束している人質の解放で合意。中東からの原油供給を脅かしてきた2年に及ぶ戦争の終結に向けた重要な一歩となった。

CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「センチメントは依然として低調だ。10-12月期に大幅な供給過剰に陥るとの懸念と中国の原油購入鈍化に対する不安が重しとなっている」と指摘。「特にリスク資産全般に圧力がかかれば、原油相場は弱含みのレンジ相場にとどまる可能性が高い」と語った。

需給を左右する新たな材料に欠ける中、原油は他の市場と歩調を合わせる形で下落した。またドルが上昇したことで、ドル建てで取引される商品の妙味が低下した。

一方、下値を支えた要素もあった。米財務省は、イラン産の原油および液化天然ガス(LNG)の同国からの販売・出荷を「支援」する個人や組織、船舶合わせて50余りを新たに制裁対象とした。ハマスを支援するイランに対する制裁が、ガザでの戦闘終結によりどう影響を受けるかにも市場の関心が集まっている。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェストテキサスインターミディエート(WTI)先物11月限は前日比1.04ドル(1.7%)安の1バレル=61.51ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.03ドル(1.6%)下落の65.22ドル。

金相場は5営業日ぶりに下落。スポット相場は一時上げる場面もあったが、総じて軟調に推移した。

金スポット価格はニューヨーク時間午後3時40分現在、前日比60.23ドル(1.5%)安の1オンス=3981.80ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は97.90ドル(2.4%)下げて3972.60ドルで引けた。

原題:Yen Gets Brief Relief After Takaichi Offers Verbal Support

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