(ブルームバーグ):ノルウェーは10日に発表されるノーベル平和賞の余波に備えている。同国には、トランプ米大統領と政権から同氏にノーベル賞を授与するよう圧力が強まっている。
イスラエルとイスラム組織ハマスの間で停戦が成立し、和平合意の可能性が出てきたことを受け、トランプ氏は自身が平和賞にふさわしいと公言し、ノルウェー当局者への直接の働きかけを行うなど、受賞を目指す動きを一段と強めている。
トランプ氏の次男エリック氏は9日、X(旧ツイッター)に投稿し、「@realDonaldTrumpがノーベル平和賞に値すると思うならリツイートを」と呼びかけた。ホワイトハウスの公式アカウントもトランプ氏を「平和の大統領」と称する写真を投稿した。
今回の件を巡り、ノルウェー政府は望まぬ形で注目の的となっており、メディアや専門家の間では、ノルウェー・ノーベル委員会がトランプ氏を受賞者から外した場合の外交的・経済的影響を懸念する声が出ている。だが一方で、こうした圧力はむしろ逆効果だとの見方も強まりつつある。
独立機関であるノーベル委員会のフリードネス委員長はノルウェーの大衆紙VGに対し、今年の受賞者は6日に決定されたと語った。さらに公共放送NRKへのコメントでは、中東での和平合意が実現した場合でも、それが評価対象となるのは来年の賞になるとの見方を示した。ノルウェーのアイデ外相も、政府はノーベル賞の選考に関与しないという立場を改めて強調している。
一方、ブックメーカーのオッズを集計したオッズチェッカーによると、トランプ氏は現在、ノーベル平和賞の最有力候補と目されている。これに続くのは、内戦下のスーダンで活動するボランティア団体「緊急対応室(ERR)」と、ロシアの反体制指導者、故アレクセイ・ナワリヌイ氏の妻ユリア・ナワリナヤ氏となっている。もっとも、過去にはブックメーカーの予想が大きく外れた例も少なくない。
2025年の平和賞に向けた推薦の受付は、トランプ氏がホワイトハウスに復帰した直後の1月31日に締め切られている。しかし、オバマ大統領(当時)が2009年に政権発足から数カ月で同賞を受賞した例もある。
ノルウェーは現在、米国との通商交渉を進めており、対米輸出品に課されている15%の関税の引き下げを目指している。ミルセット貿易・産業相は今週、ワシントンで米政府関係者と協議を行っている。
さらに懸念されているのが、2兆ドル(約300兆円)規模と世界最大級のノルウェー政府系ファンドだ。その投資の約40%は米国に向けられており、トランプ氏が同ファンドを標的にする可能性を不安視する声もある。
原題:Norway on Edge Over Trump Ahead of Nobel Peace Prize Verdict (1)(抜粋)
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