(ブルームバーグ):米国の航空業界で、連邦政府機関の閉鎖による影響が広がり始めた。政府閉鎖は2週目に入ったが、与野党の対立が続く中、議会では早期解決に向けた動きが見られない。
航空管制官など、業務継続が不可欠とされる連邦職員は勤務を続けているものの、予算案を巡る民主・共和両党の対立が解けて合意が成立するまで、給与の支払いは停止されたままだ。管制官の不足を背景としたフライトの遅延は各地に広がっており、ダラス、シカゴ、ナッシュビル、首都ワシントン近郊の空港などで運航に影響が出ている。

乗客と航空会社の双方に影響が及ぶ航空輸送の混乱は、政府閉鎖が国民生活に及ぼす影響を象徴する事例となっている。こうした事態は、ホワイトハウスと議会が妥結に向けて歩み寄る契機ともなり得る。
実際、過去には空港の混乱が政府再開を促す要因となった例もある。2019年に米国史上最長の35日間に及ぶ政府閉鎖が発生した際、バージニア州とフロリダ州の主要管制施設で管制官が相次いで病欠を申し出た。この結果、東海岸の航空輸送が滞り、ニューヨークのラガーディア空港やフィラデルフィア国際空港、ニューアーク・リバティー国際空港などで発着便が一時的に停止する事態となった。
同じ日にトランプ大統領は方針を転換し、暫定予算案に署名して政府の再開に合意した。
有権者から反発も
米運輸保安局(TSA)は、保安検査場での待ち時間が通常より長くなる恐れがあるとして、利用者に注意を呼びかけている。
米国旅行協会は8日付の文書で「旅行者は保安検査場で長い列に並び、フライトの遅延にも直面している。空港の減便が進み、管制塔が閉鎖されるケースも出ている」と指摘。同協会は、政府閉鎖によって旅行関連の経済損失が週あたり10億ドルに上る可能性があるとの試算を示した。
今回の政府閉鎖で最も大きな影響を受けているのは連邦政府職員だ。約75万人が一時帰休を強いられ、100万人超が勤務を続けているが、いずれも閉鎖が終わるまで給与の支給が停止されたままとなっている。
一方、航空交通管制官や保安要員の欠勤がわずかに増えるだけで、航空輸送システム全体が機能不全に陥る脆弱さも浮き彫りになっている。こうした状況は、議員が近く有権者から強い政治的反発に直面する可能性を示している。

政府閉鎖の長期化に伴い、航空便の遅延や欠航は増加傾向にあるが、現時点では深刻な水準には至っていない。
ただ、航空管制官やTSA職員の給与支払いが滞ると、過去の事例からみて欠勤や病欠が増える傾向がある。賃金が途絶えることで、保育料や通勤費などの基本的な生活費を賄えず、勤務を続けられない職員が増えるためだ。米労働統計局の2023年のデータによれば、TSA検査官の平均年収は約5万1000ドル(約780万円)となっている。
原題:Strained Air Travel Ups Pressure on Congress for Shutdown Deal(抜粋)
--取材協力:Aashna Shah、Caitlin Reilly.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.