イタリアの高級車メーカー、フェラーリは、9日の投資家説明会で慎重な業績見通しを発表した。この結果、同社の株価は一時16%安と、2016年1月の上場以来最大の下げ幅を記録した。

フェラーリは、2030年の調整後利益が、今年の27億2000万ユーロ(約4800億円)から少なくとも36億ユーロに増加するとの見通しを示した。この見通しは、3年前の投資家説明会で示した水準よりも、利益成長率が鈍化することを意味している。

RBCキャピタル・マーケッツの株式アナリスト、トム・ナラヤン氏は同日のリポートで「投資家は、過去に比べて調整後利払い・税引き前利益の成長が減速していると受け止める可能性が高い」と述べた。

フェラーリ株は、ボラティリティーが高いとして取引が一時停止された後、年初来では約12%の下落となっている。

 

EV計画縮小

フェラーリは同日、2030年までの電気自動車(EV)計画を縮小すると発表した。コストのかかる割に顧客を十分に引きつけられていないEVについて、計画を後退させる他の自動車メーカーの動きに追随する形となった。

同社は2030年のモデル構成で、完全EVの割合を約20%とする。22年時点の計画では40%としていた。

EVの比率を引き下げる一方で、30年のラインナップに占める内燃機関車の割合は従来計画の2倍となる40%に引き上げた。ハイブリッド車は残りの40%とし、これまでの計画通りとする。長年にわたり高収益を支えてきたエンジン搭載モデルへの依存をさらに強めることになる。

最近、アナリストの間ではフェラーリに対する評価が一段と強気に傾いており、一部はEV目標の引き下げを予想していた。ドイツ銀行の9月のリポートによると、内燃機関車の方が収益性が高いことから、フェラーリの方針転換は、投資家に好意的に受け止められる可能性が高い。

2022年6月に発表された従来のEV計画は、自動車メーカーの間で環境問題が最重要課題となり、EVへの移行が差し迫っていると見られていた時期のものだった。その後、政治環境は変化し、安全保障や貿易が優先課題となっている。

初の完全EV

フェラーリは同日、26年後半に市場に投入する初の完全EVモデル「エレトリカ」の概要を公開した。それぞれの車輪に1つずつ、合計4つのモーターを搭載し、総出力は1000馬力を超える見込みだという。フェラーリ初の5人乗りモデルで、時速100キロまでの加速は2.5秒、最高速度は時速310キロに達する。

航続距離は530キロを超え、テスラの標準的な「モデルY」に匹敵するという。その他の詳細は段階的に明らかにされ、内装の公表は来年初めに、車両全体の公開は春に予定されている。価格は今のところ明らかになっていない。

原題:Ferrari Offers Glimpse of First EV as It Trims Broader Plan (1)、Ferrari Shares Sink by Most Since 2016 on Cautious Forecast (2)(抜粋)

(株価や利益見通しの情報を前半に追加し更新します)

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