イングランド銀行(英中央銀行)は8日に発表したリポートで、人工知能(AI)関連企業のバリュエーションの過熱と、米連邦準備制度(FRB)の独立性への懸念が、「市場の急激な調整」リスクを高めていると警告した。

リポートによると、イングランド銀の6月のレビュー以降も、世界経済の先行きに「依然として重大な不確実性」が残る中で、資産価格は上昇を続け、信用スプレッドは縮小している。

2日のイングランド銀金融行政委員会(FPC)の議事録によると、当局者は「株式市場のバリュエーションは過熱気味に見える」とし、特に「AIに焦点を当てたテクノロジー企業」は、「AIの影響への期待が後退した場合」に脆弱(ぜいじゃく)になると指摘した。

米国株の記録的な上昇を背景に、AIバブルの可能性に対する懸念が高まっている。テクノロジー関連銘柄の比重が大きいナスダック100指数は、年初来で18%上昇し、将来予想利益の28倍で取引されている。過去10年の平均は23倍だった。

この動きは、最終的に壮大な崩壊と多くの企業破綻を招いた、1990年代後半のドットコム(IT)バブル期と比較されている。ゴールドマン・サックスなど一部の市場関係者はバブル懸念に異を唱えている。ポジション指標によると、投資家はさらなる上昇に強気の姿勢を保っている。

だが、イングランド銀は「AIの進展に対する実質的な障害」がバリュエーションに悪影響を与える可能性があるとしている。具体的には、電力、データ、資源供給網の制約や、AIインフラの必要要件を変えてしまうような概念的な技術革新などが挙げられる。

イングランド銀は今後、AI企業や関連産業への融資を含めた広範な影響について、追加調査を行う予定だ。最近のAI関連の資金調達取引には、その「循環的」な性質から、ウォール街でも懸念の声が上がっている。

中銀の独立性

FPCでは、FRBの独立性についても懸念の声が上がった。議事録では「もしFRBの信頼性に対する見方が急激または大きく変化すれば、米国債市場を含むドル建て資産の急速な再評価が起き、ボラティリティーやリスクプレミアムの上昇、さらには世界的な波及につながるおそれがある」としている。

イングランド銀は、他国の借入金利が米国金利と連動する傾向があるため、こうした変化が世界の金融市場全体に、より広範な悪影響を及ぼす可能性があるとも指摘した。

原題:BOE Says Soaring AI Valuations Risk Sharp Market Correction (1)(抜粋)

--取材協力:Sagarika Jaisinghani、Constantine Courcoulas.

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