フェーズ2:円安警戒で「TACO」の可能性も
その次の段階として末廣氏が見通す「フェーズ2」では何が起きるのか?円安のさらなる進展で、物価高に苦しむ世論が反発し、金融緩和期待が後退する可能性があるというのです。
「円安になっても文句が出にくかったアベノミクス時代と違い、現在はインフレ率が高い状態です。ここで円安に火がついてしまいますと、『なぜ金融緩和するのか』という話が出てきかねない」
この状態を、末廣氏は「TACO(Takaichi Always Chickens Out=高市は常に引き下がる)」と表現します。「円安になって世論が『生活へのダメージが高まる』となれば、『そんなに金融緩和をするわけではない』と主張を後退させる可能性も十分あり得るでしょう」と末廣氏は指摘します。
フェーズ3:円安加速で「利上げ観測」が復活
さらに末廣氏は「フェーズ3」として、円安に対処するための日銀による利上げ観測が復活する可能性にも言及します。
「財政リスクが意識されてさらに円安が行きすぎると、高市政権の時代にこそ利上げが必要ではないかという話にもなりかねない。株式市場も『思っていたのと話が違う』と考えるようになり、むしろ石破政権の時よりも利上げが多くなる可能性すらある」

実際、市場では10月の日銀利上げ観測は後退したものの、1月の利上げ予想は84%と高い水準を維持しています。末廣氏自身も「これまで日銀の利上げは打ち止めと考えてきたが、この論理によって円安が進み、日銀による1月利上げを予想する」と明かしました。
麻生副総裁の存在が高市政権の「バランサー」に
高市政権の行方を左右する要素として、末廣氏は麻生太郎氏の存在を挙げます。自民党副総裁として財政規律を重視する立場から高市氏の政策にブレーキをかける役割を果たすと末廣氏は見ます。
「高市さん自身も、金融緩和を積極的にやる状況ではないとわかっている部分はあるでしょう。麻生さんが『規律』を働かせることで、マーケットに安定感が出てくるというバランスは、高市さん本人にとっても良いという判断もあるのではないか」

こうした分析から末廣氏は「フェーズ2くらいまでは進むことを市場は意識しているはず。初日の6日は短・中期金利の低下と円安が進みましたが、そのうち行き過ぎないように落ち着いた動きに変わっていくのではないか」との見通しを示します。
株高円安を引き起こした「高市トレード」がこの先のマーケット、そして実体経済にどれほどの影響を及ぼしていくのか、引き続き目を凝らして見ていく必要があります。