(ブルームバーグ):2025年はプライベート市場にとって試練の年だ。
流動性の逼迫(ひっぱく)、高値つかみの影響、出口難が重なり、投資家は旧来の投資戦術を見直さざるを得ない。これまでのように容易な高リターンは期待できず、世界の投資家は難しい環境に直面している。
高リターン時代の終わり
シンガポールで開催されたミルケン研究所アジア・サミットでは、こうした危機感が相次いで表明された。
米テキサス退職年金基金(TMRS)の最高投資責任者(CIO)、ヤップ・キム氏はこの15年間は高水準のリターンが続いたが、今後の道のりははるかに複雑になるだろうとし、「昨日のプレイブック(戦術)は明日には通用しない」と強調した。
閉ざされた出口と流動性不足
年金基金や政府系ファンド(SWF)、ファミリーオフィスなどはこれまで、リミテッドパートナー(LP)としてプライベート資産ファンドに投資してきた。しかし現在は、投資した資金を回収しにくい状況にある。
シンガポールSWF、GICの顧問ジェフリー・ジェンスバキジ氏は、公開市場が堅調でなければ、プライベートエクイティー(PE)ファンドは投資先企業を高値で売却できず、新規投資余力も生まれないと解説。
同じくシンガポールのSWFであるテマセクのディルハン・ピライCEOも、「非公開企業はより長く非公開のままでいる」と述べた。
TMRSのキム氏は、流動性が潤沢だった2021年設定のファンドについて、過度のリスクと高値買収が目立ったと指摘。資金はこうした過去の案件に縛られ出口を見つけられずにいる。
投資家の対応
テマセクは公開株投資を増やすことでバランスを取っている。ピライ氏は、21年にCEOに就任して以来、長期的リターンを狙ってプライベート市場への投資を積極化してきたが、ここ1年半で公開株投資を従来以上に増やしたと明らかにした。
一方、セカンダリー(流通)市場はLPにとって出口戦略の一つとなりつつある。オールバーン・パートナーズのデブラ・ン氏は「セカンダリーは退出手段として非常に有効であることが証明された」と指摘した。
ただ、マーサー・オルタナティブスのウェン・ティン・ギョック氏によれば、プライベートクレジットやインフラファンドは5-10%、ベンチャーファンドは約20%、不動産ファンドは約30%のディスカウントで取引されるケースが多いという。
一筋の光明
厳しい見方が多い中で、楽観論もある。GICアジア・プライベートエクイティー責任者のアンクル・ミートル氏は「来年はより前向きな雰囲気になり、出口が増えて機関投資家が本格参入し、リターンも高まるだろう」と期待を示した。
AIの変革
サミットでは人工知能(AI)も主要な議題となった。米クオンツヘッジファンド、ワールドクオント創業者で会長のイーゴリ・トゥルチンスキー氏は、自社が今後3-4年で100万体のAIエージェントを活用し、効率を100倍向上させることを目指していると述べた。
同氏は1日のパネル討論で「われわれはAIや言語モデル、エージェント、エージェント型システムを全ての業務に組み込み、1000人を支援している」と語った。
原題:Global Investors Signal End of Old Private Market Playbook (2)、Global Investors Signal End of Old Private Market Playbook (1)(抜粋)
(最終2段落を追加します)
--取材協力:Ranjani Raghavan、Kari Soo Lindberg.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.