(ブルームバーグ):イスラエルはパレスチナ自治区ガザでの攻撃の手を緩め、イスラム組織ハマスとの協議に備えている。ハマスは3日、20項目からなるガザ和平案への回答として人質全員を解放すると表明。和平案への合意を迫っていたトランプ米大統領はハマスの対応を前向きに評価した。
「直ちにガザ攻撃を停止すべきだ」とトランプ氏に要求されたイスラエルのネタニヤフ首相は4日、同区内でイスラエル軍を移動させると説明。武力によってハマスを非武装化する選択肢も残した。
トランプ氏は4日、イスラエルがガザでの「爆撃を一時停止した」とし、ハマス側が「迅速に動かなければ、すべては無効になる」とソーシャルメディアに投稿した。
ネタニヤフ首相は4日、国内のテレビ番組に出演し、取りまとめ中の合意について、まだ最終的なものではないと指摘しながらも、「今後数日以内、『仮庵の祭り』期間中に、生存者と遺体を含む全人質の一括解放・引き渡しを発表できると願っている」と述べた。ユダヤ教の三大祭の一つである「仮庵の祭り(スコット)」は6日夜に始まる。
事情に詳しいイスラエル当局者によると、第三者を介した同国とハマスとの協議は5日に始まる見通し。20項目計画の一部について協議したいとするハマスの表明を受けた動きだ。当局者は、人質解放が協議の結果に左右されるかどうかについては言及を避けた。
ホワイトハウス当局者は、トランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏とウィトコフ中東担当特使が和平交渉の最終調整のため、4日にエジプトへ向かったと述べた。これについてはアクシオスが先に報じていた。
ハマスは3日、2023年にイスラエルを攻撃した際に拘束した人質全員を解放することに同意したと発表。ただ、トランプ氏が提示した和平計画20項目のそれ以外については、今後交渉が必要になるとの姿勢を示した。
また、人質解放は「必要な現地の条件が整うことが前提」としており、焦点はイスラエル側の対応に移った格好だ。イスラエルはこれまで、人質全員を解放し、ハマスを壊滅させるまで軍事作戦を継続すると宣言してきた。
匿名を条件に語ったイスラエル当局者によれば、ガザ地区のおよそ8割を掌握するイスラエル軍は防衛態勢を取っている。
パレスチナ人の目撃者によると、戦闘はおおむね沈静化している。それでも、イスラエル軍の攻勢が数週間にわたり続くガザ市では、砲撃がなお続いている。ハマスが運営するガザの保健省は、これまでに6万6千人を超える住民が死亡したとしている。紛争はガザを荒廃させ、人道危機を引き起こしており、国連の支援機関は飢饉(ききん)が発生したと宣言した。イスラエル軍もこれまでに450人余りの兵士をガザで失っている。
戦闘の終結はなお不透明な状況だ。
ハマスの上級幹部ムーサ・アブ・マルズーク氏は4日、カタールを拠点とするアルジャジーラテレビのインタビューで武装解除に応じる用意があるかと問われ、「あらゆる問題について交渉に入る」と述べた。
その上で「主権を持つパレスチナ国家が樹立された日に、ハマスはもはや武装組織ではなくなり、保有する武器をこの国家に引き渡すとすでに表明している」と付け加えた。
同氏によれば、トランプ氏の提案のうちハマスに直接関係するのは最初の9項目のみで、残りはパレスチナの全派閥や国民、さらに広くアラブ・イスラム諸国全体に関わる内容だという。
また、ハマスに直接関わる項目の中にも「実現不可能」なものがあるとし、特に72時間以内に人質全員と遺体を返還するという期限に言及。「遺体を発見するまでには数カ月を要する可能性がある」と同氏は語った。
イスラエルのネタニヤフ首相はこれまで、いかなる交渉の最中でも攻勢を継続すると主張しており、爆撃の即時停止を求めるトランプ氏の要請に従うことは、連立政権内の極右勢力から強い反発を招く可能性が高い。
ワシントンのアラブセンターでパレスチナ・イスラエル政策の担当責任者を務めるユセフ・ムナイヤー氏は「今やボールはネタニヤフ氏の側に戻った」と語った。
原題:Israel Eases Gaza Strikes as Trump Hails Hamas Hostage Offer (3)(抜粋)
(ネタニヤフ首相の発言を追加して更新します)
--取材協力:Chris Miller、Fiona MacDonald、Shiyin Chen、Catherine Lucey.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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