トランプ米政権は今週、1日から始まった政府機関の閉鎖を利用して、連邦職員を速やかに解雇する方針だ。共和党が政府閉鎖を終わらせる交渉で民主党に譲歩を迫るため強硬手段を取る構えを示している。

米行政管理予算局(OMB)のボート局長は下院議員らに対し、一部の連邦機関が1-2日以内に職員の解雇に踏み切ると述べた。非公開の会合での協議内容だとして、関係者が匿名を条件に語った。

ホワイトハウスのレビット報道官は会見で、職員のレイオフは「2日以内、差し迫っている」などと述べたが、どの機関や職種が対象となるかなど詳細については明らかにしなかった。

トランプ大統領らは同日午前、ニューヨーク市のインフラ事業への連邦資金180億ドル(約2兆6500億円)の提供を停止すると発表した。対象にはセカンド・アベニュー地下鉄計画やハドソン川トンネル計画も含まれる。ボート氏はその理由として、政府閉鎖ではなく、DEI(多様性、公平性、包摂性)に関する懸念を挙げた。

だが実際には、ニューヨーク選出の民主党指導部、シューマー上院院内総務とジェフリーズ下院院内総務の地元を直撃する内容だ。トランプ氏は今週初め、政府閉鎖を利用して「民主党の案件」を狙い撃ちにすると警告していた。

共和党のジョンソン下院議長も、ホワイトハウスが連邦官僚機構の削減に迅速に動くだろうとの考えを表明。政府閉鎖によって共和党には「通常であれば民主党の賛成を得られない施策を断行できる機会が生まれる」とFOXビジネスで語った。

その上で「OMBは目下、どのサービスが不可欠か、どのプログラムや政策を継続すべきか、そして優先順位が低いものは何かを決定する立場にある」と続けた。

OMBは政府職員の大量解雇計画を各省庁に策定させており、連邦官僚機構の縮小を狙っている。

トランプ氏とその側近らは政府機関閉鎖の責任は民主党にあると主張し、来年の中間選挙で民主党に不利に作用すると見込んでいる。

長期の政府閉鎖にはならないとの見方を示すバンス副大統領

バンス副大統領はCBSニュースに「政府再開を拒否しているのは上院民主党であり、必然的に痛みは伴う」とする一方、「不可欠な政府サービスはできる限り維持したい」と語った。

一方、共和党の穏健派と民主党議員の一部は上院議場で集まり、共和・民主の両党が面目を保てる形で事態の打開を図る方策を探った。協議の内容には、オバマケア医療保険制度の補助金延長を話し合う間、ごく短期のつなぎ予算案を成立させることなどが含まれる。

共和党のジョンソン下院議長

ガエゴ上院議員(民主)は「私は双方に余地を与えるアイデアを出していた。われわれは協議継続では一致している」とする一方、「合意は成立していない」と述べた。

民主党指導部は、対立の焦点は医療保険制度と位置付けており、特にオバマケアの補助金延長に動かなければ、数百万人の米国民に保険料上昇が差し迫っているとしている。

シューマー院内総務はMSNBCに対し「われわれはあらゆる場で闘っていく。あなた方のようなテレビ局でも、ソーシャルメディアでも、ピケ活動でも、抗議活動でも、メールでもだ」と語り、「一般の米国人がなぜ自分の医療費が上がったのか、倍になったのかと問うとき、われわれはそれが共和党の責任だと指摘していく」と述べた。

民主党の課題は、そうした戦略の下で党内結束を維持することだ。共和党は討議を終わらせ、いわゆるクリーンな歳出法案を可決するためには、民主党から8票だけ取り込めばよい。

上院では閉鎖開始前の9月30日の採決と、共和党が再度求めた10月1日の採決で、3人が造反した。民主党のマスト、フェッターマン両上院議員のほか、民主党と行動を共にすることが多いキング上院議員(無所属)が賛成票を投じた。

一方、ポール上院議員は共和党で唯一、反対票を投じた。

共和党は、政府再開に十分な数の民主党議員を間もなく説得できるとの自信を示した。

同党のデーンズ上院議員は1日、CNBCに対し「われわれは素晴らしい民主党議員らと水面下で話をしている。彼らは今の状況を好ましく思っていない」と語った。「3人の民主党議員が造反した。あと5人獲得できれば、閉鎖を終了できる」と語った。

バンス副大統領は、医療保険補助金について民主党と交渉する考えを示したが、それは政府資金が再開されてからになると述べた。

政府閉鎖は少なくとも数日間続く見通しだ。下院は今週休会となっており、上院指導部は、ユダヤ教の贖罪(しょくざい)日に合わせ、1日に議員を地元に返す方針を明らかにしている。上院は3日に再開し、閉鎖が続く場合は週末も取り組む予定だという。

原題:Trump Plans to Use Shutdown to Fire Federal Workers This Week(抜粋)

(新たな情報を追加して更新します)

--取材協力:Gregory Korte、Alicia Diaz、John Harney、Ken Tran、Hadriana Lowenkron、Emily Birnbaum.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.