米国では2025会計年度(24年10月-25年9月)末までにつなぎ予算が成立せず、米政府機関が一部閉鎖される事態となった。各機関は緊急対応計画を発動し、数十万人の連邦職員が職場を離脱することで、行政サービスが幅広く停止される。

議会予算局は約75万人の職員が一時帰休となり、1日当たり4億ドル(約590億円)の報酬が失われると推定する。トランプ大統領は、政府機関の閉鎖の機会を捉え、連邦職員を解雇する脅しをちらつかせるが、予算喪失に備える各機関のプランには、解雇に関する具体的措置は規定されていない。

政府機関の閉鎖は時期や期間、当該年度の支出権限が切れた後に業務続行を可能にする残存資金によっても、政府サービスへの影響が異なる。一般的に言えば、閉鎖が長引くほど状況は悪化する。

ホワイトハウスは、新たな予算を議会が承認しなくても支出を容易にする新たな対応指針を発表した。他の合法的出費に「必然的に伴う」経費は政府閉鎖の期間中も引き続き支出可能と説明。例えば特定の給付金の支払いが認められる場合、それらのプログラム実行に伴う管理費を各機関は支出できる。

各機関の緊急対応計画を検証した結果、閉鎖期間中に一時帰休となる連邦職員は全体の3分の1を下回る可能性が高い。過去には連邦職員の約4割が一時帰休となったケースもあり、割合としてはそれより少ない。

ホワイトハウスが承認した各機関の緊急対応計画に基づき、主な影響をまとめた。

米連邦準備制度と金融監督機関

米証券取引委員会(SEC)は400人未満の職員を維持し、緊急の執行業務に当たる一方、新規株式公開(IPO)審査や企業提出書類の承認業務の大半を停止する。米商品先物取引委員会(CFTC)はデリバティブ(金融派生商品)市場の必要最小限の監督のため数十人の職員を配置するが、他の執行・規制業務の大部分は中断される。米連邦準備制度は税金ではなく、金利収入や手数料収入で運営されており、影響を受けない。

 

国土安全保障省

国土安全保障省は、約2万3000人の職員を一時帰休させる。国境警備、航空保安、不法移民の取り締まりは継続され、税関・国境警備局(CBP)と運輸保安局(TSA)、移民・税関捜査局(ICE)、シークレットサービスの職員の大半は勤務を続ける。

国防総省

現役部隊は全員任務を継続するが、給与の支払いは遅れる可能性がある。40万人余りの文民スタッフが戦闘任務や情報活動、核抑止力、医療活動の支援のために残留する。

国務省

国務省の職員2万7000人のうち、3分の1余りが引き続き勤務する。全ての大使館と領事館は業務を継続し、パスポートとビザの行政サービスは手数料収入で賄われる。新規の助成金と出張、公開イベント、大部分の政策業務を含む他の活動は停止する。ソーシャルメディアの更新は緊急の安全情報に限定される。

ワシントンの米国務省に出勤する連邦職員ら(7月)

労働省

労働統計局(BLS)も閉鎖されるため、3日に予定される9月の雇用統計など主要指標の発表が遅れる。これに伴い、米連邦準備制度と投資家は利下げの可能性の検討に必要な公式指標を失うことになる。職場の安全検査は継続される。

商務省

トランプ大統領の貿易政策は保護される。商務省は国家安全保障の特例規定に基づき関税の調査を続行する。

商務省は緊急対応ガイドラインを9月29日に公表し、「輸入品が国家安全保障に及ぼす影響に対処するために必要な業務を継続する」とした。失効しない予算範囲内の業務に限定するとしていた従来の方針を微妙に修正した。

商務省は通商拡大法232条に基づき、半導体や重要鉱物、民間航空機、ジェットエンジン、無人航空機システム、ポリシリコン、風力タービンの輸入が米国の安全保障を脅かしていないか引き続き調査を進める。

国勢調査局は全てのデータ収集を停止し、経済分析局(BEA)も国内総生産(GDP)と個人消費支出、インフレ、貿易フロー統計のための情報収集を取りやめる。

国立気象局は予報と警報の発信を続けるが、海洋大気局(NOAA)の船舶・航空機の大部分は基地へ帰還し、研究所は閉鎖される。

原題:What a Government Shutdown Means: 750,000 Feds on Furlough(抜粋)

(米連邦準備制度やSEC、CFTCの状況を追加して更新します)

--取材協力:Caitlin Reilly、Mark Niquette、Ari Natter、Rachel Cohrs Zhang、Liam Knox、Lauren Rosenthal、Sara Forden、Zoe Tillman、Greg Stohr、Nicola M White、Allyson Versprille、Katy O'Donnell、Jessica Nix、Cailley LaPara、Josh Sisco、Derek Wallbank、Jon Herskovitz、Myles Miller、Sana Pashankar.

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