自動車部品メーカーのファースト・ブランズ・グループが9月29日に破産申請した際、提出書類の中で繰り返し浮上したのがレイストーンという社名だった。

あまり知られていないこの会社は、企業が支払いを先送りしながらも、仕入先には早く資金を届けられるようにする短期資金調達を仲介する。現在、ファースト・ブランズが利用した同社の取引が精査対象となっている。

開示されていた負債総額60億ドル(約8900億円)を上回る借り入れを、ファースト・ブランズが複雑で不透明な金融商品を通じて膨らませた課程を投資家は把握しようとしている。

ファースト・ブランズの破綻は、貿易金融(トレードファイナンス)と呼ばれる分野で、レイストーンのような企業が一見リスクの低い取引を仲介しながら、結果的に企業や金融機関に問題を引き起こした最新例だ。

昨年末には同業のステン・テクノロジーズも破綻しており、法人向け融資商品が見かけ以上にリスクを抱えていたことが露呈した。

業界最大の事件は2021年に起きたグリーンシル・キャピタルの破綻だ。同社は銀行預金や保険会社の資金をリスクの高い企業向け短期融資に回した結果、最終的にクレディ・スイス・グループの崩壊を招いた。

レイストーンはこうした過去の問題に一定の関わりを持っている。ステンの顧客が宙に浮いた際に引き受けを提案した。また、創業者のデーブ・スキルゼンスキ氏は過去にグリーンシルで勤務していた経歴を持つ。

ファースト・ブランズの破綻とグリーンシルやステンの事例に直接のつながりはないが、共通点を見ると、将来の収益を担保に企業が容易に短期資金を調達できる仕組みとプラットフォームを巡る懸念が改めて浮上する。

レイストーンやグリーンシルのような仲介業者の目的は、市場の効率性を高め、より幅広い企業に資金調達手段を提供することだ。しかし同時に、借り手と貸し手、さらにはプラットフォーム自身にとってリスクを見えにくくしてしまうことがある。

カリフォルニア大学アーバイン校ビジネススクールの会計学教授ベン・ローリー氏は「貿易金融における革新は本来、良いものであるはずだが、多くの場合その金融イノベーションが悪用され、企業が情報を隠したりより大きなリスクを抱え込んだりしてしまう」と指摘。

「時にはそのリスクが爆発することもある」と付け加えた。

レイストーンとファースト・ブランズはともにコメントを控えた。

規制当局や会計専門家は、企業が短期の資金繰りを財務諸表に載せず処理するオフバランス手法の拡大に、警鐘を鳴らしてきた。

格付けの高い企業と金融機関との取引はリスクが低いものの、財務基盤の弱い企業では亀裂が生じやすい。こうした取引の資金は、従来の担い手だった銀行ではなく、主に資産運用会社や保険会社から提供されるようになっており、投資家や規制当局にとって透明性の問題をさらに悪化させている。

21年のグリーンシル破綻を受け、米国の会計基準策定者は22年、サプライチェーンファイナンスのような取引について、規模や主要条件の開示を企業に義務付けた。しかし、新ルールが導入されてもなお、ファースト・ブランズの破産に至る過程で、多くの債権者は十分な情報を得られなかったと感じている。

今週の裁判所提出書類は、多くの貸し手にとってファースト・ブランズで何が起きたのかを初めて明らかにするものとなった。不正行為の兆候は示されていないものの、新たに設置された取締役会委員会は、同社が利用した約23億ドルのオフバランス資金調達について調査しているという。

提出書類によると、23億ドルの負債は未収入金など将来の収益を即座の現金に変える「ファクタリング」という手法に関連していた。こうした取引の多くはレイストーンを通じて行われていた。

原題:First Brands Collapse Renews Concerns Over Murky Trade Finance(抜粋)

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