(ブルームバーグ):米銀JPモルガン・チェースは、中東で進むエネルギー転換を直接体感できる機会を顧客に提供する。化石燃料依存からの脱却を目指す湾岸諸国の取り組みに投資家の関心が高まっていることが背景だ。
JPモルガン・セキュリティーズでアジア太平洋地域の株式テーマおよびサステナブル投資調査責任者を務めるハンナ・リー氏は「非常に説得力のあるテーマだ。自国の発電だけでなく、将来のいずれかの時点でクリーンエネルギーを輸出する可能性」もあると述べた。
JPモルガンは10月、新興国市場やアジアなどに重点を置く機関投資家のグループをサウジアラビアに招く。リー氏によると、湾岸諸国全域で進行中のエネルギー転換について投資家の理解を深める狙いがある。

現時点で中東では依然として化石燃料が支配的で、世界の原油生産の約30%を占める。クリーンエネルギーへの移行も米国やインド、中国などの大国の多くに後れを取っている。ただ、低いベースが出発点となるからこそ、グリーン投資の初期段階で収益機会が生まれると同氏はみている。
リー氏は「われわれの再生可能エネルギー分野のアナリスト全員」が中東の動向を注視していると指摘。電池や再生可能エネルギー、変圧器などあらゆるセクターを分析した結果、「中東・湾岸諸国の一部で再生可能エネルギーやエネルギー転換を巡る注目すべき新たな取り組みが見られ、その中でもサウジの動きが際立っている」と語った。
JPモルガンによれば、湾岸諸国のクリーンエネルギー強化は、2023年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)をきっかけに勢いを増した。
国際エネルギー機関(IEA)によると、中東地域での今年の再生可能エネルギー・原子力発電への投資額は100億ドル(約1兆4900億円)と、依然として石油・ガス供給で予想される水準の10分の1弱にとどまる見込み。
しかし、今後10年で中東・北アフリカ地域の太陽光発電能力は10倍に拡大するとIEAは予測している。
トランプ米大統領がグリーンエネルギー批判を強めていることから、機関投資家の一部が米市場を敬遠し始めている兆しが広がっている。
これまで米国に向かっていた資本の代替投資先が求められる中で、JPモルガンは中東でのクリーンエネルギー投資機会に投資家の関心を呼び込もうとしている。
原題:JPMorgan Investor Trip Pitches Gulf Energy Pivot to Clients (1)(抜粋)
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