(ブルームバーグ):29日の日本市場では株式が大幅下落。自民党総裁選挙を週末に控えて投資家が慎重姿勢に転じており、配当権利落ちが指数の重しになった。日本銀行の野口旭審議委員の発言で円は対ドルで上げ幅を拡大した。
東証株価指数(TOPIX)の終値は1.7%安。イベントが多い週の始まりで投資家が結果を見極めたいとの立場から利益確保に動いたとの声が出ていた。日経平均株価とともに指数は配当権利落ち以上の値下がりになった。円相場は上昇、米政府機関の閉鎖リスク加えて野口日銀委員が金利調整の必要性に言及したことで上げを拡大した。債券相場は上昇(金利は低下)。
日米の重要指標、日銀の正副総裁発言、自民党総裁選挙を含めて金融市場に影響を与え得るイベントが盛りだくさんな週が始まり、金融市場ではポジションを傾けにくい。代わって世界的なインフレ懸念が根強い中で金や銅といった実物資産の値上がりが目立った。
経済・金融市場の情報を提供するマーケットコンシェルジュの上野泰也代表は、日銀の企業短期経済観測調査を受けた日銀の内田真一副総裁や植田和男総裁の追加利上げについての発言を市場は注視していると29日付のリポートに記した。総裁選では小泉進次郎農相が勝つと予想した。
株式
東京株式相場は下落。自民党総裁選を含む重要イベントを多数控えて投資家が慎重姿勢に転じており、企業の配当権利落ちが指数の重しとなった。
TOPIXは1.7%安と4月11日以来の下落率を記録した。ブルームバーグのデータでは、配当権利落ちがTOPIXで約31、日経平均株価では約306円の押し下げ要因になっていた。
銀行株や自動車株の値下がりが大きく、TOPIXを押し下げた。配当権利落ちとなった三菱UFJフィナンシャル・グループやトヨタ自動車が安い。
みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、指数が高水準に達しており配当狙いで買っていた投資家が利益確定に動いていると述べた。「きょうの下落は短期的な投資家が中心になっている」としている。「イベント的には週末の自民総裁選もあり、市場参加者はどういう結果が出るか正直分からなくて、その警戒感も少し重しになっているだろう」とも述べた。
個別銘柄では、ソニーグループの金融完全子会社であるソニーフィナンシャルグループ(FG)株がプライム市場に上場、初値は205円と参考値段を37%上回った。終値は173.8円と同16%高。
セブン銀行株が上昇。26日に伊藤忠商事が第2位株主になり、調達資金をATM設置などの成長投資に充てると発表、業績拡大を期待する買いが膨らんだ。
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=148円台後半に上昇。米政府機関の閉鎖リスクを背景に全般的にドルが売られていたところに、日銀の野口委員の発言で上げが加速した。
三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは、新しい話は出ていないとした上で「米政府機関の閉鎖リスクが意識されてドルが全面安になっている」と述べた。「週が明けてアジア勢がドル売りで始めた感じではないか」としていた。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは野口氏の発言について「ハト派だが、市場では予想よりもややタカ派的との受け止め。9月会合で2人の審議委員が利上げ提案をしたので、野口委員の発言をみると10月利上げの可能性が高まった印象だ」と指摘した。
その上で「これからイベントが多くある。短観や内田副総裁、植田総裁の発言機会もあるほか、米雇用統計、自民党総裁選も控えているので、今回の発言でどんどん円高が進むということにはならない」とみている。
10月4日投開票の自民総裁選は小泉氏と高市早苗前経済安全保障担当相が競っており、林芳正官房長官が追う情勢だと共同通信が28日に報じた。
三菱UFJ銀の井野氏は「報道を見ると思ったよりも小泉氏の優勢度合いが強い印象で、クロス取引で円が買われる要因となっているようだ」と語った。小泉氏は日銀政策正常化に前向きとみられ、市場では勝利すればいったんは円が買われると予想されている。
債券
債券相場は上昇。米長期金利上昇に一服感が出ており、買いが先行した。日銀の国債買い入れオペも相場を支えた。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、米長期金利の上昇が一服して先物主導で買いが先行、長期や超長期ゾーンの日銀オペ結果が相場のサポートになっていると指摘。もっとも、「今週は重要なイベントが多く控えており、基本的には動きにくい」と述べた。
日銀は29日午前、定例の国債買い入れオペを実施した。対象は残存期間3年超5年以下、5年超10年以下、25年超、物価連動債。買い入れ額はいずれも前回オペから据え置き。
日銀の野口委員は「2%の物価安定目標の達成は着実に近づいている」と指摘。それは、「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつあることを意味している」と語った。
これを受けて先物は上げ幅を縮小して、10年債などの現物の利回りは低下幅が縮まった。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは野口氏発言について、関税による下振れリスクを気にしながら、足元の国内状況は利上げに近いということなので、短観や支店長会議を通じてそうしたリスクが解消されるのであれば利上げを支持するというのではないか、と述べた。
ハト派的だった野口委員もこうしたはっきりした見解を示しており、フラットナー(平たん化)を意識した取引が見られたとしている。
新発国債利回り(午後3時時点)
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