米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事の弁護士は、トランプ米大統領による解任の試みと争う間は職務継続を可能にするよう連邦最高裁判所に求めた。一時的な解任であっても金融市場に「混乱と支障」をもたらすリスクがあると警告している。

クック理事の弁護士は25日に提出した意見書で、司法省の要請を認めてトランプ氏が直ちにクック氏を解任できるようになれば、「米国経済を世界最強にしてきた中央銀行の独立性に終わりを告げることになる」と指摘した。

ワシントンの連邦地裁のコブ判事は9日、トランプ氏によるクック氏解任の試みは違法である可能性が高いとし、訴訟が進行している間はクック氏が職務を続けられると判断した。一方、司法省はこの判断と争っている間でもトランプ氏によるクック氏の解任を認めるよう最高裁に求めている。

バイデン前大統領がFRBの理事に任命したクック氏を巡り、トランプ氏は8月、住宅ローン申請に関する不正疑惑を理由に解任すると発表したが、クック氏は疑惑について否定し、職務を継続している。

クック氏の弁護士は、同疑惑は彼女をおとしめ、FRBを掌握しようとするトランプ氏を利する「中傷キャンペーン」の一環だと主張している。

FRBのクック理事の弁護士は連邦最高裁判所にクック氏の職務継続を求めている

最高裁は意見書の提出期限を短く設定したが、判断を示す時期については明らかにしていない。

また、クック氏の弁護士は、司法省が16-17日の連邦公開市場委員会(FOMC)が終わるまで最高裁の介入を求めなかったのは、クック氏解任に動けば市場に混乱を招く可能性を政権側が理解していたことの証左だと指摘している。

クック氏の意見書はまた、当時高裁判事だったカバノー氏が2009年に発表した論文を引用している。同論文でカバノー氏は、FRBが「米国経済の短期的な動きに直接影響を与える力を持つ」ため、大統領の直接的な統制から隔絶されていると論じている。今回の訴訟では、現在最高裁判事のカバノー氏が重要な1票を握る可能性がある。

最高裁は今年、トランプ氏が実行した別の解任を巡る争いでおおむね同氏に有利な判断を示してきた。ただし、FRBについては以前、「特殊な構造を持つ準民間組織」として区別しており、クック氏が理事に就任する前の疑惑を巡る訴訟で最高裁がどう判断するか注目されている。

同意見書の提出は、歴代の米財務長官やFRB議長らで構成する超党派グループがクック氏を支持する意見書を同じく最高裁に提出した数時間後に行われた。同グループには、ベン・バーナンキ氏、アラン・グリーンスパン氏、ジャネット・イエレン氏ら元FRB議長が含まれている。

歴代高官らの意見書では、解任への不服を申し立てたクック氏の訴訟が続いている間にトランプ氏の解任を認めれば、FRBに対する国民の信頼は低下し、物価安定や雇用拡大、長期金利の安定といった取り組みを損なうと指摘している。

原題:Fed’s Cook Warns Supreme Court of Market ‘Chaos’ If She’s Fired(抜粋)

--取材協力:Greg Stohr.

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