(ブルームバーグ):世界最大の温室効果ガス排出国である中国は、2035年までに排出量を7-10%削減する目標を打ち出した。ただ、この水準では事実上の排出ゼロへの道筋や国際的な気候行動の加速には不十分との見方が強い。
今回の削減幅は排出量のピーク時からのもので、中国は「より踏み込んで取り組む」としている。
中国の習近平国家主席は24日、国連がニューヨークで開いた気候変動関連のイベントでビデオ演説を行い、「これらの目標はパリ協定の要件に基づく中国の最善の努力を反映している」と説明。その上で「目標達成には中国自らの不断の努力に加え、支援的で開かれた国際環境が必要だ」と語った。
習主席は4月、二酸化炭素(CO2)以外の汚染物質も含め経済全体を対象とする厳格な対策を進めると表明しており、今回の発表はその延長線上にある。中国指導部は以前から控えめな目標を掲げ、最終的にそれを上回る実績を上げてきた。

中国はまた、全エネルギー消費に占める非化石燃料の比率を30%以上に引き上げ、風力・太陽光発電の設備容量を20年比で6倍超に拡大する計画も示した。
欧州連合(EU)は新たな排出削減目標をまだ公表していないが、中国が今回提示した目標に対しては批判が相次いだ。欧州委員会のフクストラ委員(気候・温室効果ガス排出実質ゼロ・クリーンな成長担当)は「この水準は明らかに期待外れだ。世界の気候目標の達成を一段と難しくする」と述べた。
アナリストや環境活動家も、慎重過ぎ不十分だと非難する一方で、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの開発・普及の取り組みについては評価している。
アジア・ソサエティー政策研究所の「チャイナ・クライメート・ハブ」責任者、李碩氏は「総合目標は環境保護団体を失望させ、世界が切実に求める気候リーダーシップには及ばない」と指摘しながらも、「自国の利益追求が強まっている世界において、中国が他国よりも強い立場から気候行動を推進できるのは朗報だ」と述べた。

習主席は、削減の基準年を明示していない。その代わり、中国の温室効果ガス排出量がピークに達した時点を基準にするとしている。現在のデータと傾向に基づけば、24年にそうした地点にすでに至った可能性もある。
アナリストらは、中国の排出量がピークに達した兆候があると分析。習主席は30年までにピークアウトさせる目標を掲げてきたことから、目標達成が前倒しされた可能性もある。重工業の減速や世界最大規模での再生可能エネルギー導入が化石燃料需要を徐々に減らしていることが要因とみられる。
習主席はまた、トランプ米政権のエネルギー政策を暗に批判。通訳を介して、低炭素への移行は時代の流れだと述べた上で「ある国がこれに逆行しているが、国際社会は正しい方向に集中して揺るがず、行動を緩めず、強度を保つ必要がある」と呼びかけた。

原題:China Vows to Cut Greenhouse Gas Emissions 7% to 10% by 2035 (3)(抜粋)
--取材協力:Dan Murtaugh、Jing Li、Lili Pike.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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