米ダラス連銀のローガン総裁は25日、連邦準備制度が政策金利のベンチマークとして1980年代以降用いてきたフェデラルファンド(FF)金利に代え、一段と幅広く利用され市場との連動性が強い翌日物金利の採用を検討するよう提案した。

ローガン総裁は「連邦公開市場委員会(FOMC)は異なる短期金利をターゲットとする準備を始めるべき時が到来した」と、リッチモンド連銀主催のイベントでの講演テキストでコメントした。付随の論文と合わせ、市場関係者が長年にわたり必要性を指摘してきた論点に言及した形だ。

ダラス連銀のローガン総裁

バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米金利戦略責任者、マーク・カバナ氏は「われわれは長らく、連邦準備制度が政策目標をFFからレポに移すべきだと主張してきた。これは正しい方向への一歩だ」と指摘。さらに「なぜローリー(ローガン総裁)なのか。この件について誰も動いていないからだ。彼女が行動を起こす必要があり、今回の講演で事実上、それをやってのけた」と語った。

パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局としては、金融システム全体の短期資金需要の動向を十分に反映するだけの重要な市場に主要政策金利を結びつけているかどうかが問われている。

ローガン総裁はFF金利の誘導目標は時代遅れだと説明。利用の少ない銀行間市場と翌日物マネーマーケットとの関連性はぜい弱で、突然崩壊する恐れもあると述べた。連邦準備制度が金融政策運営のメカニズムを更新することは、効率的かつ効果的な中央銀行業務の一環だと論じた。

問題が生じる前に行動を

「現時点で全く問題はないから、行動の必要はないという意見もあるかもしれない。しかし、フェデラルファンドと他のマネーマーケットの間の伝達が崩壊すれば、代替の目標金利を直ちに見つけなくてはならない」と指摘。「時間に追われて重要な決定を下すのは、力強い経済と金融システムを促す上で最善の方法とは言い難い」と話した。

ローガン氏は2022年にダラス連銀総裁に就任する前、ニューヨーク連銀の市場部門に20年余り勤務し、連邦準備制度のバランスシート運営を統括した経歴がある。ローガン総裁は金利を所定のレンジ内に維持するための手段を複数示し、その中で「トライパーティー一般担保レート(TGCR)」が最も有益だとの見解を示した。

TGCRは翌日物レポ取引に基づく三つの金利の一つだ。この三つには広く利用されている担保付翌日物調達金利(SOFR)も含まれ、いずれもニューヨーク連銀が管理している。市場関係者は、一段と厚みのある貸出市場を反映しているとして、TGCRがFF金利の代替指標として理想的だと主張してきた。

 

ローガン総裁によれば、TGCRは1日当たり1兆ドル(約150兆円)超の取引があり、マネーマーケット全体に変化が行き渡りやすい。これに対し、FF市場の現在の取引高は1日当たり平均で1000億ドル弱にとどまる。

FF市場はかつて、金融機関同士が翌日物資金の貸し借りを行う主な市場だった。だが金融危機やコロナ禍の大規模な金融緩和により銀行システムの資金は潤沢となり、その多くが連邦準備制度に預け入れられることになった。この結果、銀行が預金準備率の要件をクリアするために相互に資金を貸し借りする必要性は大幅に減じた。

ローガン総裁は「民間の活動が担保付き市場にシフトしていることを踏まえると、いずれ目標金利の見直しを迫られる可能性が非常に高いと考えられる。変更が必要になるなら、市場が円滑に機能しており、市場参加者が十分な事前通知を受けられる時期に行うのが最善だ」と述べた。

また、FF金利を代替するプロセスは、当局が進めるバランスシート縮小プログラムや金融政策戦略全般に影響しないとの認識も示した。

FRBウォッチャーはFF金利について、経済への信用の流れを管理するための手段と見なしている。しかし現在、実際の制御弁の役割を担っているのは、銀行の準備預金への付利(IORB)を含む、当局が決定する一連の金利だ。

TDセキュリティーズのストラテジスト、ジャン・ネブルジ氏は「FF市場からレポ市場への移行は極めて妥当だ。レポ市場の規模は桁違いに大きい」と指摘。「レポ市場の日々の変動は大きいが有益な情報を与えてくれる。一方、FF市場は非常に安定しているものの、突然そうでなくなる可能性がある」と述べた。

FF金利は25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の誘導レンジ内で推移する仕組みだが、政策金利の変更時を除き過去2年間はほとんど変動していない。22日には4.09%と、4.08%から小幅上昇しただけで、今週も安定している。

一方、TGCRは日々変動するものの、主な政策手段となった場合、連邦準備制度が設定する25bpのレンジ内に収まる限り、問題はないとの認識をローガン総裁は示した。「適度な変動を容認することで、大規模かつ頻繁で複雑なオペを実施しなくても現在のシンプルで効率的な手段で金利を管理できる」と解説した。

FF市場の問題点は他の当局者も指摘している。ローガン氏の後任としてニューヨーク連銀の証券ポートフォリオを管理するロベルト・ペルリ氏はFF金利について、国内の借り入れや銀行の日中当座貸し越しを含むマネーマーケットの状況を反映する指標の一つと以前に説明していた。だが、3月のイベントでは、準備預金の日々の変化には反応しない点を認めた。

ゴールドマン・サックスで30年間の勤務経験があるクリーブランド連銀のハマック総裁も、FF金利をターゲットとすることが妥当かどうか、当局者は疑念を抱くべきだと述べている。

ローガン総裁

原題:Logan Says Fed Should Consider Replacing Its Benchmark Rate(抜粋)

(3段落目以降に総裁や市場関係者の発言などを追加して更新します)

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