米半導体大手エヌビディアは、対話型人工知能(AI)のChatGPTを展開する米OpenAIに最大1000億ドル(約14兆7900億円)を投資し、新たなデータセンターやAIインフラの整備を支援する。今回の大型合意は、ChatGPTのようなAIツールとこれを稼働させるために必要な計算能力への需要が急拡大していることを改めて浮き彫りにする。

両社が22日、戦略的提携に向けた意向表明書(LOI)に署名したと発表した。エヌビディアの先端AIチップを用いてOpenAIのモデルを訓練・展開するため、OpenAIによる少なくとも10ギガワット(GW)規模のデータセンター構築を後押しする。

事情に詳しい関係者によると、投資は段階的に行われ、合意署名時に最初の100億ドルが提供される。エヌビディアは現金を出資し、その対価としてOpenAIの株式を取得。以降は、1GW分のコンピューティング能力が追加導入されるごとに資金が提供される。関係者は部外秘の情報だとして匿名を条件に語った。

合意を受け、エヌビディアの株価は22日の米国株式市場で3.9%上昇した。年初来では約37%高を記録し、時価総額で世界トップの企業としての地位を維持している。

ブルームバーグ・ニュースは先月、OpenAIが従業員や元社員が保有している同社株の売り出しを行うため、自社の評価額を約5000億ドルとする方向で協議を始めたと報じた。

エヌビディアのジェンスン・フアンCEO

エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は発表資料で「この投資とインフラに関するパートナーシップは次の飛躍を意味する。10GWを展開し、次のインテリジェンスの時代を切り開く」と述べた。

10GWはニューヨーク市のピーク時の電力需要に相当する規模で、両社の構想がいかに巨大であるかが示されている。

エヌビディアは資金力を生かし、AIシステムの構築における自社製品の覇権を維持したい考えだ。独自のチップを含むハードウエア開発に取り組むOpenAIを主要顧客としてつなぎ留めれば、ライバル各社の製品が台頭する中でも、地位固めに役立つ可能性がある。

OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は発表資料で、「われわれはエヌビディアと構築するものを活用し、AIの新たな躍進を生み出すと同時に、それを人々や企業が大規模に利用できるようにする」と強調した。

OpenAIのサム・アルトマンCEO

OpenAIのChatGPTは週間で約7億人が利用しており、製品の開発や運用には膨大な計算能力が必要となる。同社はこれまで、顧客需要に応える上で、特に新製品リリース時に計算能力の制約に直面してきた。

エヌビディアとOpenAIは、投資の詳細や実施時期について明らかにしていない。エヌビディアの広報担当者はコメントを控えた。

両社は声明で「向こう数週間に、この新たな戦略的パートナーシップの詳細について最終的な取りまとめを行うことを楽しみにしている」と述べた。

フアン氏によると、今回のプロジェクトにはエヌビディアの半導体が最大500万個投入される見込みで、これは同社が今年出荷する総数に相当するという。

バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏は、OpenAIとのパートナーシップによる収益規模は投資額そのものを上回る可能性が高いと指摘。1GW分のデータセンター電力は数百億ドル規模のエヌビディア製品を伴うとの見方を示した。

原題:Nvidia, OpenAI Make $100 Billion Deal to Build Data Centers (2)(抜粋)

(情報を追加して更新します、更新前の記事でOpenAIの利用者数に関する記述を修正済みです)

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