(ブルームバーグ):トランプ米大統領は22日、政権が解熱鎮痛薬「タイレノール」の有効成分と自閉症を関連付け、妊婦に対し医療的に必要な場合を除き服用を控えるよう強く呼びかけると述べた。広く受け入れられた科学的証拠は存在しない中での発言となった。
トランプ氏はホワイトハウスで開かれたイベントで、「タイレノールを服用するのは良くない。そのため妊娠中の女性には、医療的に必要な場合を除き使用を控えるよう強く勧めている」と語った。ケネディ厚生長官も同席した。
政権はまた、自閉症関連の症状に対する新たな治療薬として「ロイコボリン」の承認手続きを開始したと明らかにした。ロイコボリンは既に一部の抗がん剤の副作用や貧血の治療に用いられている。開発元の英GSKは規制当局と表示変更に取り組むとした。
今回の発表は、ケネディ氏とトランプ氏が医学界で広く受け入れられていない科学を基に保健指針や政策を覆そうとする動きの最新事例。自閉症の原因をめぐる研究は数多くあるが、数十年の科学的調査でも単一の原因は特定されていない。250万人の子どもを対象にした大規模研究では、タイレノールとの関連が否定されている。

トランプ氏はタイレノールの有効成分であるアセトアミノフェンの影響について言及。妊婦は極めて高熱の場合のみ服用すべきだと述べ、公衆衛生当局者の見解からはるかにそれた発言を行った。
タイレノールを製造するケンビューの株価は22日、7.5%下落し上場来安値で取引を終えたが、その後の時間外取引では5%上昇した。ケンビューは21日、アセトアミノフェンの使用が自閉症を引き起こすことはないと「独立した健全な科学」で示されているとの声明を出した。
モーニングスターのアナリスト、キム・キョンヒ氏は、政権が具体的にタイレノールの表示変更を迫る意図が見られなかったことが、時間外取引での株価回復につながった可能性があると分析した。
トランプ氏はイベントで小児向けワクチン政策にも言及し、接種のスケジュールを分散させるべきだと述べた。複数の病気に対応するワクチンを一度に投与すべきではないと主張。はしか、風疹、おたふくかぜワクチンのようなものは長期間に分けて接種すべきだとした。
ケネディ氏は、食品医薬品局(FDA)が妊娠中のアセトアミノフェン使用のリスクに関する医師向け通知を出し、安全ラベル変更の手続きを開始すると説明した。厚生省は全米で啓発キャンペーンを展開する方針だという。トランプ氏はまた、国立衛生研究所(NIH)が自閉症研究のため13件の大型助成金を発表することも明らかにした。
原題:US Warns Against Tylenol in Pregnancy Over Unproven Autism Fears(抜粋)
--取材協力:Michelle Fay Cortez、Jef Feeley、John Tozzi、Redd Brown.
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