世界最大級の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国内のインフラ、不動産をそれぞれ対象としたファンドに計500億円の投資を相次いで決めた。国内のオルタナティブ資産を主な投資対象としたファンドを自ら選定して、出資するのは今回が初めてとなる。

GPIFが公開した資料で明らかになった。強化しているオルタナ投資の一環として、データセンターなどを対象としたインフラファンドに400億円、オフィスビルなどを対象とした不動産ファンドに100億円をそれぞれ投じる。

海外のプライベートエクイティー(PE、未公開株)や不動産、インフラを主な対象としたオルタナファンドへの投資は既に複数の実績がある。今回、国内資産にも対象を広げた。巨額の資金を運用するGPIFの決定は、投資家によるオルタナ資産への関心をより高め、国内市場の成長を後押しする可能性もある。

GPIFは投資一任契約を結んだ運用機関に委託する形でオルタナ投資を行っていたが、2022年度からは個別のファンドを選定して、資金を拠出する投資も開始した。ファンドに自ら出資することで投資先資産の情報をより早く把握できる効果があり、リスク管理の強化にもつながる。

投資を決めたのは米デジタルブリッジ・グループが設定したインフラファンドと米モルガン・スタンレーが設定した不動産ファンド。デジタルブリッジはデジタルインフラに特化したオルタナ資産の運用会社だ。投資期間はそれぞれ10年としている。

SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは、GPIFの今回の投資について、オルタナ資産における分散投資や利回り向上を求めての動きだと指摘した。巨額の資金を運用するGPIFは、市場の価格形成や民間の投資行動などをゆがめないように配慮している。そのため、1件ごとの投資額は小口となるが「市場拡大のサポート要因となる可能性はある」と述べた。

GPIFの出資について、モルガンSとデジタルブリッジの広報担当者はコメントを控えた。

GPIFの運用資産総額は約260兆円。オルタナ資産への投資配分の上限は全体の5%としているが、6月末時点では1.6%にとどまる。オルタナ投資は比較的高い利回りが期待できる一方、流動性の低さに加え、インフラ需要や不動産市況の変動といったリスクも抱える。

内田和人理事長は7月のブルームバーグとのインタビューで、上場資産と比べたオルタナ資産の超過収益を分析するチームを新設したとして、「リスクとリターンをしっかりと分析した上で今後も取り組んでいきたい」との考えを示している。

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