トヨタ自動車やデンソーに部品を供給する老舗自動車部品メーカーが、新たな成長分野に選んだのは意外にも「月経カップ」だ。

名古屋に本社を置くゴムノイナキは、2023年からフェムテックブランド「feminak(フェミナック)」でシリコーン製月経カップを開発・販売しており、年内にも海外展開を予定している。

ガソリン車など内燃機関車から電気自動車(EV)へのシフトで、部品メーカーは需要減少を見据えている。同社の月経カップ事業への参入は変化に対応しようとしている姿勢の表れだ。

1個4780円の月経カップの売上高は、同社の年間売上高415億円のごく一部にすぎないものの手応えは上々で、8月は前年同月比7割増となった。同社は、医療用シリコーンを使用した「日本製」である点を強みとして、年末までにシンガポールとベトナムでも展開する計画。来年にはより手ごろな価格帯のラインも発売する予定だ。

同社は1919年に工業用ゴム製品の卸小売業として創業。現在では自動車関連事業が売り上げの約9割を占め、製品ラインナップは約1万7000品目に上る。

日本国外では、世界的なEVへの移行がサプライチェーンを再編し、従来の自動車部品メーカーは変革に迫られている。経営企画本部・商品企画室の小山俊一氏は、自動車業界が変化する中、イノベーションが必要だと感じたという。

フェミナックを担当する近藤絵美氏は「100年以上培ってきたゴムの知識を生かして、月経の悩みをなくそうと思った」と語る。厚みは0.1ミリ単位の精度で設計され、柔軟性があり、においがつきにくく、洗いやすいカップになっているという。

月経カップの特許は1世紀以上前にさかのぼるが、生理用ナプキンやタンポンに代わり持続可能な選択肢として注目され始めたのはごく最近のことだ。主にシリコーン製で、折りたたんで膣(ちつ)内に挿入すると、広がって吸着密閉する仕組み。タンポンより長時間使用でき、洗って繰り返し使える。

日本では生理用ナプキンの利用が約75%と最も多いが、月経カップの利用は徐々に広がりを見せている。インテグロ(東京都目黒区)は2018年から海外の月経カップを販売。国内最大手生理用品メーカーのユニ・チャームは21年に自社製品を発売した。

市場調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイトによると、世界の月経カップ市場は今年約16億ドル(約2400億円)規模に達し、32年まで年平均6.6%成長する見通しだ。約500億ドル規模の生理用品市場全体のまだごく一部で、さらなる成長余地がある。

--取材協力:Dong Lyu.

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