(ブルームバーグ):トランプ米大統領は第1次政権当時、黒人の失業率が歴史的な低水準にあるとしきりに自賛していた。しかし現在、同失業率は2020年以来の急激なペースで上昇している。
米国の黒人失業率は過去3カ月に1.5ポイント上昇。リセッション(景気後退)でない時期としては異例の速さだ。この結果、8月の失業率は7.5%と白人の2倍となり、過去3年間に縮小してきた格差が帳消しとなった。
研究者らは、2つの要因が重なってこうした状況が生まれたと指摘する。一つは労働市場全体の減速を背景に、景気下降期に最初に雇用を失う傾向のある黒人が不利になっていること。もう一つは、黒人労働者の比率が高い連邦政府職員の削減をトランプ政権が進めたことだ。

経済政策研究センター(CEPR)の人種・経済・正義担当ディレクター、アルジャーノン・オースティン氏は「現政権の政策には景気を減速させ、米国の黒人に不均衡に大きな打撃を及ぼしている要素が数多くある」と指摘。「米国の黒人は今の景気下降の影響を真っ先に受けている」と述べた。
トランプ氏は2024年大統領選の選挙戦で、「エイブラハム・リンカーン以来、黒人にとって最高の大統領だ」と自身を位置付けた。しかし直近のデータは、こうした主張に疑問を投げ掛ける。
トランプ第1次政権時の2019年、黒人の失業率は5.3%まで低下した。翌20年、新型コロナまん延時に16.9%へと大幅に上昇した後、バイデン政権下で過去最低となる4.8%を記録した。
今年1月にトランプ氏が大統領に返り咲いた時点で、黒人の失業率は6.2%に達していた。全体の失業率が緩やかに上昇した状況が反映された。今年はその失業率の上昇ペースが速いこと、および黒人と白人の失業における格差が再び広がっていることが特徴となっている。

原題:Black Unemployment Is Surging in Trump’s Overhaul of US Economy(抜粋)
--取材協力:Nazmul Ahasan.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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