(ブルームバーグ):エフィッシモ・キャピタル・マネージメントは16日、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表したカーケア用品のソフト99コーポレーションについて、経営権を握った場合も現社長の田中秀明氏に引き続き経営を委ね、指名委員会等設置会社への移行などのガバナンス(企業統治)強化を促していくとの方針を示した。
発表資料によると、エフィッシモは1株当たり4100円で、発行済み株式数の約3分の1を下限に応募分すべての買い取りに応じる。買い付け期間は16日から10月29日までで、買い付け代金は最大約843億円。ソフト99は、創業家出身の田中氏主導の経営陣による買収(MBO)を実施中で、会社側は当初MBOへの賛同と株主への応募推奨を表明していた。
MBOの買い付け価格は1株2465円で、エフィッシモは66%高い価格で対抗TOBを仕掛けた格好になる。その理由についてエフィッシモは資料で、MBO価格が株価純資産倍率(PBR)1倍を下回る著しく割安な水準で、少数株主の利益が保護されていないと考えたためなどと説明していた。
過度に割安な価格での非上場化を巡っては、東京証券取引所が7月下旬、一般の投資家が不利益を被るのを防ぐためMBOや支配株主による買収で市場を退出する企業に対し、社外取締役などで構成する特別委員会から意見を得て、手続きや価格の公正性などに関して説明することを義務付けていた。
ブルームバーグの取材に対し、エフィッシモは、TOBが成功して支配株主になった場合でも引き続き田中氏に経営を委ねたいと文書で回答。同ファンドとして、指名委員会等設置会社への移行、独立社外取締役の割合3分の2以上への増員、経営陣へのインセンティブ報酬付与、最適資本構成の追求などガバナンスやコンプライアンスの強化を求め、中長期的な企業価値向上に寄与したいとした。
エフィッシモの対抗TOBの実施を受け、会社側はMBOへの賛同表明を維持しつつ、応募推奨は撤回すると発表している。エフィッシモとしても、会社側の賛同を得られるよう、今後もソフト99の疑問や疑念に対し、真摯に説明していくと述べた。
また、ブルームバーグのデータによると、エフィッシモは太平洋工業の株の買い増しを進めており、9.35%を保有する筆頭株主になっている。同社もまた、「PBR1倍割れ」価格でMBOを実施中だ。太平洋工業は工場の取り壊し費用などで簿価純資産額の相当程度が毀損(きそん)されることなどから価格には合理性があると説明していた。
これに対しエフィッシモは、PBRは株価を1株当たり純資産で割ることで算出されるため、株価を低迷させていた経営陣がその割安な株価を前提にMBOを行うことで利益を得ることになると主張。「主張は的外れで、PBR1倍未満でのMBOを正当化できない」と批判した。同ファンドとして「少数株主保護の観点から、問題のあるMBOは関心事の一つだ」と強調した。
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