米エネルギー省のライト長官は、核燃料の調達でロシアへの依存を減らすためにウランの戦略的備蓄を拡充し、原子力発電の長期的な展望に対する信頼を高めるべきだとの認識を示した。

経済の電化に伴い電力需要が急増する中、トランプ政権は原子力エネルギーを推進する計画。米国では94基の原子炉が発電量の約20%を担っているが、これら原子炉に必要な濃縮ウランの約4分の1はロシアが供給している。代替の調達先や追加備蓄がないままロシアからの供給が急速に途絶えると発電量の約5%が危機にさらされる恐れがある。

ライト長官は15日、国際原子力機関(IAEA)の年次総会に出席するために滞在中のウィーンでブルームバーグ・ニュースの取材に応じ、「ロシア産の濃縮ウランを使わないという目標に向かってはいるが、まだその段階に達していない」と述べた。

IAEAの年次総会で演説するライト長官(9月15日)

同長官はさらに「今後、米国で大型原子炉と小型モジュール炉(SMR)の両方でウランの消費が急速に拡大することを期待している」とし、「適切な備蓄量は今後さらに増える。国内でさらなるウランと濃縮能力が必要だ」と述べた。

この発言を受けて、ウラン関連株は急伸。ウラン採掘企業カメコはトロント市場で10%上昇した。米国市場でセントラス・エナジーは一時9.8%、ウラニウム・エナジーは12%、それぞれ上昇。ウラニウム・ロイヤルティも15%高となった。

IAEAがまとめたデータによれば、米企業のウランの備蓄量は平均で1年2カ月分と欧州やアジアを大きく下回っている。欧州連合(EU)は2年半、中国は12年分の備蓄を確保しているという。

ライト氏はどれだけウラン備蓄を積み増すべきかについて言及を避けたが、新たな原子炉建設に応じて段階的に増加させる可能性を示唆した。現在、米国内にある商業用の濃縮施設は2カ所のみだ。

核兵器への転用が可能な核燃料の製造は歴史的に国家が管理してきた。

しかしライト氏は、米投資家ピーター・ティール氏が出資するウラン濃縮スタートアップ、ゼネラル・マターを例に挙げ、民間資本の参入を促したい考えも示し、「それが効率性、イノベーション、スピードの鍵だ。そうしてこそ進歩が生まれる」と述べた。

 

原題:US Looks to Boost Uranium Reserves for Nuclear Power (1)(抜粋)

--取材協力:Ari Natter.

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