(ブルームバーグ):米連邦高裁は15日、トランプ大統領が解任を目指すクック連邦準備制度理事会(FRB)理事について、同理事が解任の無効を訴える訴訟が進行している間は解任を差し止めるとした下級審の判断を支持した。政権の試みを当面阻止した形だ。
ワシントンの連邦高裁は、クック理事が当面は職務を継続できると判断。賛成2、反対1の判断により、クック理事は16、17両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合に出席し、政策金利を巡る投票に参加できる見通しとなった。トランプ氏は連邦最高裁に介入を求めると予想される。

FOMCは今週の会合で0.25ポイント利下げの判断を下すと見込まれている。一方、上院本会議は15日夜、トランプ氏が先にFRB理事に指名したマイラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長について表決を行い、賛成多数で就任を承認した。
深まる対立
クック理事は先月、住宅ローン不正の疑いを理由に自身を解任しようとしたとして、トランプ氏を相手取り連邦地裁に提訴。同理事は疑惑を否定している。この訴訟は、トランプ氏の利下げ要求に抵抗してきた連邦準備制度とホワイトハウスの対立が深まる中で、大きな火種となっている。
連邦地裁のコブ判事は今月9日、クック理事の訴訟が進行する間、職務を継続できると判断。コブ判事はまた、トランプ氏による解任の試みは違法である可能性が高いと指摘していた。連邦高裁の判断により、職務継続を巡る決定は当面維持されることとなった。
司法省は「現在または将来の訴訟、捜査の可能性がある事案についてはコメントしない」とする声明を発表した。FRBはコメントを控えた。クック理事やホワイトハウスの担当者にコメントを要請したものの、返答は得られていない。
連邦高裁判事3人のうち、いずれもバイデン前大統領が指名したチャイルズ判事とガルシア判事は、クック理事解任を一時的に差し止める仮処分の停止を求めた政権の要請を退ける判断を下した。一方、トランプ氏が政権1期目に指名したカッサス判事は反対意見を示した。
連邦高裁のチャイルズ、ガルシア両判事は、トランプ氏がSNS投稿を通じてクック理事を解任しようとした手法を巡り、疑惑の通知や反論の機会を提供せず、憲法上の適正手続きの権利を侵害した可能性が高いとする地裁判事の判断を支持した。
高裁判事らは今回、クック理事に対する住宅ローン不正の疑惑そのものには踏み込まなかった。また、同理事がアトランタの不動産について、主たる居住地ではなく「別荘(vacation home)」として申告しており、トランプ政権当局者が理事解任を正当化する根拠として用いた他の記録と矛盾している可能性があるとの報道にも触れなかった。
原題:Trump Can’t Fire Cook Before Fed Meeting, Appeals Court Says (2)(抜粋)
(背景を追加して更新します)
--取材協力:Christopher Condon、Amara Omeokwe.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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