(ブルームバーグ):12日の米株式市場では、S&P500種株価指数が小反落。週間ベースでは1.6%上昇し、堅調さを維持した。この日発表されたミシガン大学消費者マインド指数は、来週の米利下げ観測に変更を迫る内容ではなかった。
個別銘柄ではテスラが大幅高。一方、ワクチンメーカーの株価は下げた。トランプ政権の保健当局者らが、新型コロナウイルスワクチンと25人の子どもの死亡例を関連付けたことが材料視された。

9月のミシガン大消費者マインド指数(速報値)は5月以来の低水準となった。一方で、5-10年先のインフレ期待は2カ月連続で上昇。労働市場減速を示す最近の指標に続く同指標を受け、市場参加者の間では年内3回の利下げを織り込む動きが強まっている。
コメリカ銀行のビル・アダムズ氏は「米連邦準備制度理事会(FRB)は一方で上昇するインフレ率、もう一方で弱い雇用市場という相反する要因に引っ張られている」と指摘。「向こう数カ月でFRBは追加利下げをするとみられており、問題は実施するか否かでなく、どの程度の規模で行うかだ」と述べた。
株式相場が活況を呈しているのは、悲観的な消費者センチメントが示唆するよりも企業の利益見通しはずっと明るいと、市場関係者がみているからだとも話した。
ブルームバーグ・ニュースが実施した調査によれば、エコノミストらは米労働市場のひずみを受け、FRBが来週の会合以降、今後数カ月間に複数回の利下げを実施するとみている。回答の中央値は、年内に2回の利下げ見込みだが、4割超のエコノミストは3回を予想している。

マイケル・ゲーペン氏らモルガン・スタンレーのエコノミストは、FRBが来年1月まで4会合連続で利下げを行うと予想。その後はインフレ面の影響を評価するために金利変更を見合わせるが、「こうしたノイズが一巡すれば、労働市場の悪化継続を背景に4月と7月に追加利下げがあると予想する」とリポートに記した。
来週の連邦公開市場委員会(FOMC)について、TDセキュリティーズのストラテジストは、労働市場の状態を踏まえてガイダンスが「ハト派寄り」になる可能性が高いと指摘。ただ、インフレ上振れが重大なリスクとして残っていることを踏まえると、過度に緩和的になることはないと述べた。
同社のオスカー・ムニョス、ジェナディー・ゴールドバーグ両氏は「パウエルFRB議長やドット(金利予測分布図)が将来の追加利下げにコミットしない場合、それほどハト派ではないと市場が解釈する可能性はある」と発言。
その場合、金利とイールドカーブは最近の勢いを一定程度打ち消されると予想した。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は「FRBが利下げを再開する中、現金のリターンは一段と低下することになる。余剰現金をより利回りの高い資産に振り向ける必要性は高まるとみている」と述べた。
外為
外国為替市場ではドル指数が小幅高。市場関係者の間では、来週のFOMC会合で今後数カ月の利下げ幅に関する手掛かりを得たいとのスタンスが多い。
円は対ドルで下落。一時0.6%安の1ドル=148円07銭まで売られる場面があったが、その後はやや下げ幅を縮めた。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%未満の上げ。一時0.3%上昇していたが、上げ幅が縮小した。
米国が主要7カ国(G7)諸国に対し、ロシア産原油を購入する中国とインドに最大100%の関税を課すよう求める方針との報道があった後に、ユーロが売られ、ドルが上昇する場面があった。
ドル指数は週間ベースでは0.32%の下落と、8月上旬以来の大幅な下げとなった。
国債
米国債相場は下落(利回り上昇)。週間ベースでは4週連続での相場上昇となった。この日は10年債利回りが一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、4.08%を付けた。
今週実施された3本の中長期債入札後のリマーケティングや、社債の供給が来週再び増えるとの見通しも、この日の利回り上昇につながった。
アムンディのビンセント・モルティエ最高投資責任者(CIO)は「雇用市場の弱さを踏まえれば、政治的圧力の有無にかかわらず、FRBは行動を余儀なくされるだろう」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「年内3回の利下げを引き続き見込んでいる」と述べた。
アムンディは、米国債のイールドカーブが短期ゾーン主導でスティープ化するとみてポジションを構築。一方、アリアンツやピムコは、最近の上昇局面を利用してカーブリスクを一部縮小したと明らかにしており、より慎重な姿勢を示している。
原油
ニューヨーク原油先物相場は小幅高。米国によるロシア産原油への制裁の脅しは実現していない一方、ウクライナによるドローン(無人機)攻撃が増加し、ロシアからの供給が混乱する可能性は高まっている。
ウクライナ当局は、ロシア西部の石油関連施設をドローンで攻撃したと発表。バルト海沿岸の重要な石油積み出し拠点2カ所に打撃を与えたとしている。事情に詳しい関係者によると、同地域で最大の石油積み出し港であるプリモルスクが攻撃を受け、稼働を一時停止。もう一つの重要な石油輸出拠点であるウスチルガに送油するポンプ場も攻撃対象になったという。
ラボバンクのエネルギーストラテジスト、ジョー・デローラ氏とフローレンス・シュミット氏はリポートで、「停戦は依然として見込み薄であり、ウクライナはロシアのエネルギーインフラへの攻撃を強めると予想される。よって、原油供給の混乱が価格を下支えするだろう」と記した。両氏は2025年終盤におけるウェストテキサス・インターミディエート(WTI)先物の予想を1バレル=63ドルとしている。

米国は主要7カ国(G7)諸国に対し、ロシア産原油を購入する中国とインドに最大100%の関税を課すよう求める方針だ。
制裁面で進展が見られなかったことから、週末を控えて強気ポジションを手じまう動きが広がり、上値を抑えた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物10月限は32セント(0.5%)高の1バレル=62.69ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.9%上昇の66.99ドル。
金
金スポット相場は反発。週間では4週続伸となった。米利下げ期待の高まりを背景に、金連動型の上場投資信託(ETF)への資金流入が増えている。
金は今週、1オンス=3650ドル近辺で推移し、9日には過去最高値を更新した。ブルームバーグがまとめたデータによれば、金連動型ETFの保有量は今週これまでに約17トン増加した。

UBSグループは金価格の年末目標を従来の1オンス=3500ドルから3800ドルに引き上げた。金ETFの購入拡大、金利低下、ドル安が理由。26年半ばまでには3900ドルに達すると予想している。
ウェイン・ゴードン氏らUBSのアナリストはリポートで、「金とドルの強い逆相関が続く中、ドル安の進行は投資需要を押し上げ、ヘッジとして金が利用されるだろう」と指摘。また「トランプ大統領が利下げを望んでいることも金の妙味を高めている」と記した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時59分現在、14.71ドル(0.4%)高の1オンス=3648.78ドル。週間では1.7%上昇。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は12.80ドル(0.35%)上昇の3686.40ドルで引けた。
原題:Stock Buyer Fatigue Kicks In as Bond Yields Rise: Markets Wrap
Dollar Heads for a Weekly Loss Ahead of Fed: Inside G-10
Traders Lock In Fed Bets, Boosting Treasuries for Fourth Week
Oil Holds Steady With Focus on Russian Oil Trade, Air Strikes
Gold Rises Toward Record as ETFs Expand in Run-Up to Fed Meeting(抜粋)
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