(ブルームバーグ):米ゴールドマン・サックス・グループのマクロトレーダーは、記録的な上昇が続く株価の下振れ要因となる経済指標が何なのか、見極めることが重要だと指摘した。今後12カ月は警戒を怠らないよう投資家に呼び掛けている。
ゴールドマンのパオロ・スキアボーネ氏は、労働市場関連の指標が景気減速の兆候をつかむ上で重要だと指摘。具体例として、ニューヨーク連銀のデータで、失業リスクは依然として低いものの、失業者が再就職できる確率は推計で過去最低となる45%にとどまっている点を挙げた。
S&P500種株価指数は10日に過去最高値を更新したものの、米国の労働市場や財政支出、人工知能(AI)に対する過剰な熱狂の可能性を巡って新たな懸念が浮上し、一部の経験豊富な投資家の間では警戒感もみられる。スキアボーネ氏は以前もリセッション(景気後退)のリスクが過小評価されていると主張している。

十数年前の世界金融危機以来、米国は新型コロナウイルスの感染拡大期を除けば、リセッションを経験していない。企業業績の堅調さや個人消費の底堅さ、金融システム全体への打撃要因がない中で、2018年や22年のような弱気局面は短期で収束してきた。
スキアボーネ氏は「金融環境が緩和すれば市場はそれを織り込み、好調な時間は延びるが、いつまでも続かない」とコメントした。
同氏は今後、大きな警戒シグナルに発展する可能性がある幾つかの指標を挙げている。その一つが株式のボラティリティーだ。米株式市場の「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は22年から24年にかけて低下傾向にあったが、今は上昇トレンドに転じている。
また、米国債など安全と見なされる債券に対する、リスクが比較的高い債券の上乗せ利回りを示すクレジットスプレッドが拡大し、ローンに対するリスクプレミアムが見直されている。インフレ連動債の価格と、景気敏感株と安全性を重視するディフェンシブ銘柄を比較する株価指数との乖離(かいり)も広がっている。
同氏は「低ボラティリティーは、低い相関性かゴルディロックス(適温)のどちらかが条件で今はそのどちらでも当てはまらない。今後12カ月は先行指標と遅行指標を切り離して見るべきで、それができれば勝機がある」と指摘した。

原題:Goldman Trader Urges Stock Investors to Watch for Cracks in Data(抜粋)
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