4日の日本市場では株式が反発した。米国で7月の求人件数が減少し、景気の減速感から9月の利下げ観測が強まった。債券は上昇(金利は低下)、円は1ドル=148円台前半でもみ合った。

7月の米求人件数は10カ月ぶりの低水準となり、市場予想も下回った。金利スワップ市場は9月の米利下げを一時完全に織り込んだ。米国でハイテク株の一角が上げたことも投資家心理の改善につながり、日本株は銀行など金融や情報・通信、輸出関連などを中心に買いが広がった。

みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、長期金利の上昇が落ち着き、株式の買い戻しにつながっていると指摘した。ただ、石破茂首相の政権運営に対する不安が残っており、投資家が本格的にリスクを取り始めているわけではないとも述べた。

株式

日経平均株価は600円超上昇した。米ハイテク株高を受けてソフトバンクグループやアドバンテストなど人工知能(AI)関連株に買いが集まった。フジクラや古河電気工業など電線株もみずほ証券による目標株価引き上げを好感して大幅に上げた。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、8月の上昇相場に乗れなかった投資家の押し目買い意欲はなお強いと指摘。一方できょう買われたAI関連などグロース株については「まだ上値を追う感じではない」と言い、「しばらくはバリュー株中心の相場になるのではないか」と話した。

個別ではソニーグループが2.9%高。8月月間の自社株買い額が直近では最多となり、業績計画の上方修正や増配が行われる可能性があるとの見方をジェフリーズ証券が示した。

ニデック株は値幅制限いっぱいのストップ安水準で取引を終えた。同社やグループ会社の経営陣の関与・認識のもとで不適切な会計処理が行われていたことを疑わせる資料が複数見つかったと3日に発表した。

債券

債券相場は上昇。求人減少で米国の長期金利が低下した流れを引き継いだ。この日の30年債入札を終えたことも買い安心感につながった。

入札結果によると、最低落札価格は92円80銭と、市場予想92円90銭を下回り、大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は18銭と前回15銭からやや拡大した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.31倍と、前回の3.43倍から低下した。

明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、30年債入札について「警戒されていた割に無難な結果だった」とし、入札で債券相場が崩れなかったことは安心材料だと話す。ただ、政治不透明感があり、「今回の結果を受けて買いが入り、利回り曲線がフラット(平たん)化するような状況にはなりにくい」とみる。

野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジスは応札倍率も悪くなく、前日に入札前のポジション調整で売られた分をカバーができるだけの買いがあったと評価。ただ、積極的な買いにつながるには政局や財政を巡る不透明感が解消される必要があるとの見方を示した。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

円相場は1ドル=148円台前半でのもみ合いだった。求人件数の落ち込みによる米利下げ観測の強まりを受けたドル売りと、日本銀行の利上げ観測の沈静化や政局の先行き不透明感の高まりを受けた円売りが交錯した。

りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは、米国は利下げサイクル再開が確実視されており、ドルも売り材料を抱えているが、「ドル売りの対象として円は選好されにくい」と話す。目先は円安方向を予想しており、「150円タッチもありそうだ」と言う。

市場参加者の間では節目の水準として、投資家の長期売買コストである200日移動平均線(148円84銭付近)がドルの上値抵抗線として意識されている。三菱UFJ信託銀行ニューヨーク支店資金証券室のファーストバイスプレジデント、小野寺孝文氏は「上に抜ければ149円、そして150円が見えてくる」と述べた。

一方、みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストはリポートで、米求人件数が弱く地区連銀経済報告(ベージュブック)の景気認識も総じて弱いと指摘。4日発表の米経済指標が弱めの結果となれば「年内2回程度にとどまっている米利下げ織り込みが強まり、ドル安圧力となる」と予想した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:アリス・フレンチ、清原真里.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.