ヨガウエアメーカーのルルレモン・アスレティカは、マーケティング戦略を大きく転換し、販売低迷からの脱却とブランドの影響力拡大を目指し、有名アスリートの起用に乗り出している。

これまで同社は、従来型のスポーツ広告にほとんど頼ることなく売上高を100億ドル(約1兆4800億円)超まで伸ばしてきた。

だが、今は米テニス界のスター、フランシス・ティアフォーが全米オープンでルルレモンのウエアを着用し、ゴルファーのマックス・ホーマもPGAツアーで身に着けている。

ルイス・ハミルトン

中でも注目すべきは、自動車レースの最高峰フォーミュラ1(F1)で7度の年間王者に輝いたルイス・ハミルトンをブランドアンバサダーに起用したことだ。

これは、同社が従来のヨガ中心の路線からさらに踏み出す姿勢を最も明確に示すものと言える。

ルルレモンの最高マーケティング責任者(CMO)、ニッキ・ノイバーガー氏はインタビューで、 「今年は多くのアスリートとの契約が実現し、本格的な展開が始まった」と語った。

 

同社の株価は年初来で47%下落。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期の株価上昇分は全て失われ、現在は投資家の信頼回復が課題となっている。

米国の消費者が支出を抑えていると経営陣が警鐘を鳴らす中、カルビン・マクドナルド最高経営責任者(CEO)は2026年末までに売上高125億ドルを目指すという高い目標を引き続き掲げている。

ただ、アナリストの平均予測では、同社はこの目標に約5億ドル届かない見通しだ。

4日の決算発表では、マクドナルド氏が主導する販売促進策の進捗(しんちょく)状況が注目される。前回の決算発表時、売上高と利益の見通しが市場予想を下回り、株価が急落した。

フランシス・ティアフォー

ルルレモンは長く勢いが衰えず、黒のヨガパンツはあらゆる女性のクローゼットに入る定番として浸透。ティーン層にもカジュアルウエアが受け入れられ、メンズ向けのフィットネス商品を展開したことで、さらに顧客層を広げた。

しかし、そうした成長は今や一段落している。過去4年間で売上高を140%伸ばした勢いはなく、Alo Yoga(アローヨガ)やVuori(ヴオリ)といった新興ブランドが市場シェアを奪いつつある。

アパレル業界全体がそうであるように、ルルレモンも関税コストとのバランスを取りながら利益の確保を図っている。また、急成長によって生じた新たな課題にも直面している。

マックス・ホーマ

小売業界を長年分析してきたシメオン・シーゲル氏によれば、「ルルレモンはどこにでもあるブランドになった。今も強いブランドではあるが、広げ過ぎた感は否めない」という。

ルルレモンは創業当初、当時としては珍しかったインフルエンサーのネットワークを活用して商品を売り込んでいた。

ヨガを中心に据え、熟練のヨガインストラクターやトレーニングやウェルネス分野のローカルインフルエンサーと提携してきた。

こうしたヨガを軸にしたネットワークは今も同社のブランド戦略に組み込まれているが、製品ラインの拡大に伴い、より大きな影響力を持つ人物が必要となった。

ヨガの世界には米プロバスケットボールNBAの大スター、レブロン・ジェームズのような名声とマーケティング力を兼ね備えたスターは存在しないためだ。

ルルレモンの店舗(ニューヨーク)

原題:Lululemon Bets Being More Like Nike Will Help Ailing Stock (2)(抜粋)

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