(ブルームバーグ):オーストラリア2位の年金基金、オーストラリアン・リタイアメント・トラスト(ART)が米国債に対して弱気姿勢を強めている。米政権の政策がインフレをあおる可能性があると懸念しているためだ。
運用資産3300億豪ドル(約31兆8000億円)を抱えるARTのシニアポートフォリオマネジャー、ジミー・ルーカ氏は先週のインタビューで、同基金がダイナミック資産配分戦略を通じて米国債をアンダーウエートにしていると述べた。
ルーカ氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が最近、ハト派寄りに傾いたにもかかわらず、米国の財政赤字拡大やトランプ大統領の貿易戦争による影響で物価圧力が強まる可能性があると指摘。より割安な投資先として英国やオーストラリアを挙げた。
「景気循環的には米利下げ方向にあるが、財政面の懸念から将来的なリスクがある」とし、「構造的にみれば、米国の強力な財政支出と、より積極的に完全雇用を維持しようとする米金融当局との政策の組み合わせは、インフレ加速につながりやすい」と語った。

ARTのほか、台湾の保険会社や香港の年金基金なども米資産の保有を見直している。米国の信用格付けの引き下げや米連邦準備制度の独立性を巡る懸念から、投資家はオーストラリアや英国の高格付け社債などの代替資産を模索している。
ルーカ氏は米2年債と10年債のイールドカーブ(利回り曲線)スティープ化を見込んだ取引で利益を確定したと明らかにした。
また、米国債だけでなくドルに対しても弱気である一方、日本円や金などを選好しているとした。
原題:Australia’s No. 2 Pension Cuts Treasuries Bet on Rising US Risks(抜粋)
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