(ブルームバーグ):日本株は上値を追う展開が続くとの強気な見方が広がっている。米国の関税に関する不透明感が後退、企業改革も進み投資家は強気な姿勢を崩していない。
ブルームバーグが運用会社や証券会社など9社を対象に行った調査では、日経平均株価は12カ月先に18日に付けた終値での最高値4万3714円から10%上昇すると見込まれている。最も強気な予想の場合、現水準からの上昇率は28%になる。
想定を上回る企業決算と自社株買いの活発化を背景に株式相場は上昇トレンドにある。そこに日米の関税合意が加わり相場をさらに押し上げていくとの期待が高まっている。
マネックスグループのエキスパートディレクター、イェスパー・コール氏は日経平均は今後12カ月から15カ月で5万5000-6万円に達すると予想する強気派だ。。企業のリーダーたちは単に守りに徹するのではなく、今や成長志向で将来を見据えているという。また「マクロ面から見ると米国の関税は明確化し、それほど悪いものではない」と話す。
テクノロジー関連や輸出企業といった一部の銘柄にけん引された昨夏の高値更新時とは異なり、今回は世界的な人工知能(AI)ブームに加え、日本銀行の政策正常化への期待から製造業や銀行、消費財など幅広い業種が値上がりしている。アルファ・ビンワニ・キャピタルの創設者、アシュウィン・ビンワニ氏は「銘柄が劇的に変化した」と指摘し、「これは新たな転換点だ」と述べた。
日本株は割高感がある米国株からの分散投資先となっている。東証株価指数(TOPIX)の12か月先予想株価収益率(PER)は15.7倍と、S&P500種株価指数の22.4倍より低く割安だ。バンク・オブ・アメリカのアジアファンドマネジャー調査では、日本は域内で最も魅力的な市場と位置付けられている。日本取引所グループのデータによると、海外投資家の8月第2週の日本株買越額は11年ぶりの高水準だった。
相場の勢いに水を差しかねないのが国内政治だ。7月の参院選で自民・公明の与党は惨敗し、両院ともに過半数割れとなった。政治の停滞が懸念され、財政など政策の不確実性がリスク要因に挙げられる。「多くの海外投資家は日本市場への投資時期や額を決める前に、政治の混乱が落ち着くのを待ちたいと考えているだろう」と、ペッパーストーングループの調査ストラテジスト、ディリン・ウー氏は語る。
三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、海外投資家は政治情勢を注視しており、石破茂首相の進退の行方と政治運営が日本株に大きな影響を与えると話す。ゴールドマン・サックスやUBS証券のストラテジストも、政治への不安で投資家心理が悪化し、株価の上昇を妨げる可能性があるとみる。
日経平均は昨年8月に3日間で20%下落、今年4月7日には一日で7.8%下げた。上昇基調は簡単に急反転しかねない。
市場では長らく続いたデフレからの脱却が大きなテーマとなっている。4-6月期の国内総生産(GDP)は前期比年率1%増と、エコノミストの事前予想である0.4%増を大きく上回った。堅調な景気を背景に内需関連企業の業績は改善し、銀行も金利上昇による利ざやの拡大で利益が膨らむ。企業はコスト管理を徹底しながら利益を維持、投資魅力が高まっている。
野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは「デフレ脱却がテーマのため、金利がある世界は追い風」と指摘し、金融のほか、建設や不動産などのセクターが相場のけん引役であり続けると読む。
「アルファほど国際投資家の注目を集めるものはない」と、バイトツリー・アセット・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、チャーリー・モリス氏は語り、「今後10年は日本株が優位に立つだろう」との見方を示した。
--取材協力:アリス・フレンチ.
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