(ブルームバーグ):全米旅客鉄道公社 (アムトラック)は28日、ワシントン、ニューヨーク、ボストンを結ぶ北東回廊で、高速列車「アセラ」の新型車両の運行を開始した。総事業費23億5000万ドル(約3450億円)のプロジェクトは、数年にわたる遅延を経てようやく実現した。
アムトラックの発表文によれば、「ネクストジェン・アセラ」と名付けられた新型車両は25年間使用された従来のアセラに置き換わるもので、座席数は約27%増える。最高速度は時速160マイル(約257キロメートル)で、従来車両より10マイル速い。
新型車両は2027年までに28編成が順次導入される。運行開始は当初21年が予定されていたが、試験の難航やインフラ面での制約、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴う混乱などが影響し先送りされていた。

トランプ大統領がホワイトハウスに復帰して以降、政府はアムトラックの将来のプロジェクトに対する連邦資金拡充に前向きな姿勢に転じている。トランプ政権は以前、アムトラックに対する連邦補助金の削減を主張していた。
アムトラックのロジャー・ハリス社長はインタビューで、「選挙が行われた時、資金面でわれわれが直面している状況に懐疑的な見方もあった」としつつ、「政権から言われたのは、『良い鉄道を運営し、われわれへの依存度を下げて欲しい』ということだった」と述べた。

ハリス氏によれば、アムトラックは今後収支を均衡させ、28年までにインフラ投資に資金を回すことを目指している。
新型車両はフランスのアルストムがニューヨーク州ホーネルの工場で製造。米国内の180社を超えるサプライヤーの部品が使用されている。アルストムは欧州やカナダで高速列車を製造してきたが、アセラの新型車両を巡っては、北東回廊の老朽化したインフラに対応するため設計を調整する必要があった。
アルストムの米州地域のマイケル・キルリ社長によれば、同社が国外でそうした課題に直面するのは「非常にまれ」だという。
「非常に古い線路で運行するため、最新の高速技術に加えて、カーブで車体を傾斜させるシステムを取り入れた」とキルリ氏は語った。
新型車両は当初、最高時速180マイルで設計されていたが、北東回廊の古い線路や架線の制約により160マイルに制限されているとキルリ氏は説明。ただ修繕が進めば速度は向上する見通しだという。
新型車両では無料で高速WiFiが利用できるほか、全座席にUSBポートと電源コンセント、読書灯が備え付けられている。
原題:Amtrak Debuts New High-Speed Acela Trains After Years of Delays(抜粋)
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