(ブルームバーグ):1970年代から80年代に流行したキャラクター「モンチッチ」が再びブームを迎えている。日本人にとっては懐かしい存在だが、海外の人気インフルエンサーがSNSで紹介したことで世界規模で盛り上がっており、日本発のキャラクタービジネスの新たな可能性を示唆している。
オーストラリアのインフルエンサー、サム・トッドさん(30)が今年初め、愛用するヴィンテージバッグに付けるモンチッチのキーチェーンを手に入れる目的もあり、日本を訪れた。母国でも販売されているが、価格は倍以上で種類も限られているという。
日本でもなかなか見つからなかったが、観光客でにぎわうキデイランド原宿店で目当ての商品に巡り合えた。「やっと見つけられて本当にうれしかった。人気がどんどん高まっていてみんなが欲しがっている」と話すトッドさん。喜びの瞬間を収めたTikTok動画は、すでに30万回以上再生された。
タイや韓国での人気を皮切りにモンチッチが本格的に復活したのはここ1-2年のことだ。最近ではK-PОPグループ、ブラックピンクのリサが東京でモンチッチグッズを買う姿を自身のSNSに投稿したことでも話題となった。
モンチッチが誕生したのは1974年。日本だけでなく欧米でも人気となり、アニメ化まで実現したがその後人気は下火となっていた。製造元のセキグチ(東京都葛飾区)によると、前期(2025年2月期)の売り上げはその前の期の2倍以上の45億5000万円に達した。
そのうち、海外売上は国内を上回るペースで拡大し、全体の4割を占める。セキグチの吉野壽高社長は本社での取材に、「円安に伴う欧米の方のインバウンド需要にも喚起されて売れ行きも非常に好調になっている」と話した。
セルロイド人形を製造販売する前身の関口セルロイド゙加工所が設立されたのは1918年。100年以上続いてきた家業を率いる吉野社長は、モンチッチの復活を目の当たりにしても冷静だ。製品の95%を生産する中国での増産を進める一方で、人員は増やさない方針だという。浮き沈みがあるとして、売れていないときでも「生き残っていける状態にしておかないと次の山を目指すことができない」と話す。
モンチッチの販売は好調だが、懸念もある。米トランプ政権による関税だ。米小売り事業者からの注文について、「今年前半はすごく調子がよかったが、5月にすべて止まった」と話す。その後、ある程度回復したものの、関税導入前の水準には戻っていないという。
大人もターゲット
今回の復活の大きな特徴は、米国を中心に新たに大人を主なターゲットに据えている点だ。大人は子どもよりも関心が持続し、高額の消費も可能だ。モンチッチのブーム再燃は、ソニーエンジェルや中国発のキャラクター「ラブブ」の人気と共通した背景を持っており、これらのキャラクターのグッズは1点数千円から時に数万円でも世界中の店頭で飛ぶように売れている。
バッグにキーホルダーやアクセサリーなどを飾る「バッグチャーム」と呼ばれる文化が浸透していることも追い風となっている。市場調査会社のスフェリカル・インサイツは、キーチェーン・ペンダントの世界市場は23年の178億ドル(約2兆6300億円)から33年には281億ドル規模にまで成長すると予測している。
吉野社長はモンチッチが単なるおもちゃではなく、「キャラクターとして認識してもらうことがようやくここにきてできてきた」と感慨深げに話し、モンチッチを「世界中の人に持っていただきたい」と意気込んだ。
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.