ウォール街のトレーダーらは、米連邦準備制度の利下げ再開の用意がようやく整うと期待し、今月に入り株式と債券に一斉に資金を投じてきた。騰勢が続く前提として、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長から青信号が出るのをひたすら待ち望んできた。

パウエルFRB議長が22日、カンザスシティー連銀主催の経済政策シンポジウム、ジャクソンホール会合で行った講演で、トレーダーらの期待がまさに現実となった。

パウエル議長がハト派的トーンを示し、「リスクバランスの変化が政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と発言したことを受け、今年4月以降で最大のクロスマーケットでの相場急上昇が引き起こされた。

しかし、パウエル氏は「データ次第」のアプローチを一貫して強調しており、連邦公開市場委員会(FOMC)が今後数カ月でどこまで利下げを進めるか予測は難しい。次回FOMCまでの数週間以内に発表されるデータは、引き続き一定のリスクを伴う。

フォート・ワシントン・インベストメント・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、ダン・カーター氏は「市場はこのトーンの変化を好むだろう。だが次回FOMCまでには、なお多くのデータの発表が予定されており、先走りしないよう注意が必要だ」との認識を示した。

パウエルFRB議長は「リスクバランスの変化が政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と発言した

先物トレーダーは先週末、9月16、17日のFOMC会合で利下げが決定される可能性が非常に高いと想定するポジション設定に動き、米2年国債利回りは一時12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。5営業日続落していたS&P500種株価指数は1.5%高と持ち直し、過去最高値に迫る勢いを回復した。

パウエル議長と政策担当者らはインフレ再加速のリスクと成長減速リスクとのバランスをうまく取ろうと苦慮している。

1日発表の7月の雇用統計は弱く、5月と6月の就業者数の伸びが大幅に下向き改定された。その一方で、7月の米生産者物価指数(PPI)は前月比で約3年ぶりの大幅上昇を示し、米関税政策の影響下でのインフレ懸念が再燃した。

コロナ禍以降、米連邦準備制度の金融政策の方向転換を市場は早計に織り込み、何度も裏切られてきた。

ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は「今回はパウエル議長にとって重要な転換と言える。市場の今後の焦点は、成長減速懸念が企業利益を押し下げるかどうかだが、米連邦準備制度が投資家に著しい逆風を生じさせることはないだろう」と指摘した。

パウエル議長はジャクソンホール会合での講演で、ハト派的トーンを示し、トレーダーらの期待が現実となった

原題:Wall Street Got the Rally Signals From Powell It Was Hoping For(抜粋)

--取材協力:Michael MacKenzie、Emily Graffeo、Carter Johnson.

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