トランプ米大統領は22日、半導体大手インテルの株式を米政府が約10%取得する合意を正式に締結した。経営不振に陥っているインテルの再建と国内製造の強化を狙った措置。

インテルの発表文によると、米政府は普通株4億3330万株を取得する。これは同社の完全希薄化後の発行済み株式総数の9.9%に相当する。出資額は89億ドル(約1兆3000億円)で、国内半導体業界支援法(CHIPS法)および「セキュア・エンクレーブ」プログラムの補助金から拠出される。この2制度からはすでに支給が承認されていたが、未支給だった。

インテルはすでにCHIPS法に基づき22億ドルを受け取っており、今回の出資と合わせた総額は111億ドルにのぼる。取得される株式には議決権がなく、米政府が取締役会の議席を持つこともない。

リップブー・タン最高経営責任者(CEO)は発表文で「大統領と政権がインテルに寄せた信頼に感謝しており、米国の技術と製造におけるリーダーシップの強化に向けて協力していきたい」と述べた。

ニューヨーク市場でインテル株は22日に前日比5.5%上昇して24.80ドルで取引を終えた。合意締結を受けた時間外取引では約1%下落した。

トランプ氏はSNSへの投稿で、今回の取引を「米国にとっても、インテルにとっても素晴らしい取引だ」とし、インテルが手がける最先端の半導体が米国の未来の根幹を成すと述べた。

米政府による今回の部分的な株式取得は、通常なら戦時や大規模な経済危機といった極限的状況を除いて認められてこなかった自由市場原則を大きく逸脱するもので、投資家や政策担当者にとっても驚きの展開だ。

ホワイトハウス高官は、例外的かつ特殊な状況であり、半導体生産を国家安全保障の問題と捉えていると説明した。インテルは米国内でチップを大規模製造できる数少ない企業の一つであり、過去数年に米国の供給網を揺るがしたような半導体不足の再発を防ぐのが狙いという。

インテルは、1000億ドル超を投じて国内製造能力を拡大する計画や、アリゾナ州の新工場が年内に大量生産を開始する予定であることを強調した。ただ、たびたび延期されているオハイオ州の新工場計画には言及しなかった。

今回の合意は、今月初めにトランプ氏がタンCEOの辞任を要求し、中国との関係を理由に「利害相反が著しい」と非難していた状況からの劇的な転換でもある。その発言がきっかけで両者の会談が実現し、今回の合意につながった。

トランプ氏はタン氏について、「米政府はインテルの株式10%を保有すべきだと思う、と私が言ったところ、彼は『検討する』と答えた。私は『是非そうして欲しい』と伝えた」と述べた。

ホワイトハウスは、インテルとの合意を他の企業にも適用できるひな型と位置付けているが、同様の協議を行っている企業については明らかにしていない。しかし、米当局者は台湾積体電路製造(TSMC)やマイクロン・テクノロジーなど、米国への投資拡大を表明している企業が、資金提供と引き換えに株式譲渡を迫られることはないと述べた。

原題:US Takes Nearly 10% Intel Stake, Clinching Unorthodox Deal (2)(抜粋)

(インテルの発表などを追加します)

--取材協力:Dina Bass.

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