トランプ米大統領は、自身の肝いりである新生児向けの投資口座制度「トランプ口座」について、18年間で30万ドル(約4700万円)以上まで膨らむ可能性があると主張している。ただ、それには相場が毎年異例の上昇を続ける必要があると金融アドバイザーらは指摘する。

第2次トランプ政権の看板政策である大型減税・歳出法の下、将来の経済的な成功を後押しするため、政府は2025-28年に生まれた子供一人当たり1000ドルを自動的に拠出し、口座を設ける。同プログラムを巡っては先週、実業家のマイケル・デル氏と妻のスーザン氏が10歳以下の子供を対象に計62億5000万ドルを寄付することで合意し、弾みがついた。

こうした動きを受け、米国株を中心とするインデックス型の公募投資信託や上場投資信託(ETF)で運用されるトランプ口座に、改めて注目が集まっている。ホワイトハウスは現行で年間5000ドルの拠出上限額まで積み立てた場合、26年生まれの子供が成人するまでに、口座残高は30万ドル以上に達する可能性があると説明している。

メリーランド州にあるノースブルック・ファイナンシャルの税務担当ディレクター、エリオット・ペッパー氏は「毎年『ゴルディロックス(適温)』相場のようなリターンが得られ、全てが上昇し続けることを前提としなければならない」と指摘。「最初の数年で深刻なリセッション(景気後退)、あるいは弱気相場に見舞われれば、そこから回復するには時間がかかる」と話す。

比較的強気

ニュージャージー州のビーコン・ヒル・プライベート・ウェルスの創業者、トーマス・ゲーガン氏も、トランプ氏の試算は年13%前後という「比較的強気なリターンの仮定に基づいている」と分析した。

同氏によれば、1926年以降のS&P500種株価指数の平均リターンは10.4%だが、2010-24年のリターンは年平均13.9%だった。

「つまり、そうしたレベルの成長は可能だが、特に堅調な市場環境を反映している」とゲーガン氏は説明。「リターンが年によって変動する場合、運用益の順序が重要になることに注意が必要だ。平均リターンが同じでも、初期の損失やパフォーマンスのばらつきが結果に影響を与える可能性もある」と述べた。

シカゴにあるザ・ウェルシー・ペアレントの創業者で、チーフ・ウェルス・オフィサーを務めるケリー・パーマー氏は、今回の試算が各世帯で毎年5000ドルを拠出できることを前提にしている点を指摘。20年近くという期間の中で、運用に多くを回せないといった家計の苦しい時期に直面することは十分あり得る。

それでもアドバイザーらは、子供の将来のために運用すること自体は総じて良い考えであり、トランプ口座はそのためのツールの一つになり得ると語る。

ニューヨークのFARファイナンシャル創業者、イゴール・アロノフ氏は「全般的にこれらの口座は素晴らしいアイデアだと思うが、30万3800ドルという数字に到達するには、かなり驚異的なリターンが必要になるだろう」と話した。

原題:Trump’s $300,000 Kid Accounts Claim Assumes 13% Annual Returns (1)(抜粋)

--取材協力:Ben Steverman.

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