イオンの時価総額が21日、総合スーパー事業を持つ小売大手で長年トップを走ってきたセブン&アイ・ホールディングスを抜き、首位の座に踊り出た。個人株主を重視した株主構成が奏功し、グループ再編への期待も株価を押し上げている。

同日の終値をベースでの時価総額は、イオンが5兆1922億円でセブン&アイの5兆1766億円を上回った。セブン&アイが現在の持ち株会社を発足させた2005年以降で初めてのことだ。

売上高、営業利益ともに業績面ではイオンはセブン&アイに劣るが、株式市場での評価は逆転した。その背景についてSBI証券の田中俊シニアアナリストは、ビジネスモデルや株主構成の違いがあると説明する。

田中氏によれば、主力のコンビニ事業で低迷するセブン&アイはアクティビストの関与やカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたことで、人気株の地位から後退した。一方、イオンは個人株主の基盤を強化し、外部からの脅威を回避することで市場の信頼を高めているという。

イオンの個人株主比率が3割なのに対し、セブン&アイは1割と大きな差がある。「お客さま株主」をスローガンに掲げ、株主優待などを活用して顧客を株主に取り込んできた。個人株主を対象とした株主懇談会を開くなど対話にも積極的だ。9月には1株を3株にする株式分割を予定しており、さらに投資のハードルを下げる。

「イオンは一部の投資家にとって必須の保有株になりつつある。その安定性が理由だ」と田中氏は分析。イオンが展開する小型・都市型の業態「まいばすけっと」は急成長し、将来的にはコンビニの脅威となる可能性もあるという。

また、グループ再編への期待も株価上昇に追い風となっている。2月にイオンモールとイオンディライトの完全子会社化を発表し、親子上場の解消に動いた。今月には首都圏と近畿でスーパーを運営するグループ会社の再編も発表した。上場子会社の多さで知られるイオンが再編に動いたことで、株主からの期待も高まった。

--取材協力:院去信太郎.

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