(ブルームバーグ):電気自動車(EV)に関連する中国企業による投資額は2024年、国外向けが国内向けを上回った。ただ、外国投資案件はコスト高や遅延、リスクの増大に直面している。
調査会社ロジウム・グループが18日発表したリポートによると、EVサプライチェーンに属する中国企業による昨年の対外投資は計160億ドル(約2兆3600億円)に上り、国内投資の150億ドルを上回った。投資の大半はバッテリー生産関連だった。同リポートでロジウムは、投資の約8割を国内に振り向けてきた長年の傾向からの「歴史的転換」を示すものだと指摘している。
中国企業が世界展開を迫られている背景には、国内の過剰生産能力や長引く価格競争によってサプライチェーン全体で利幅が圧迫されていることがある。また欧米での厳しい関税を回避するため現地に生産拠点を設け、外国顧客からの「現地生産拡大」要請に応じる動きも広がっている。
ロジウムのシニア調査アナリストでリポート執筆者の1人、アルマンド・マイヤー氏は「対外投資が国内投資を上回った事実は、中国市場の飽和と、高収益を求めた世界展開の戦略的意義を反映している」と述べた。
対外投資の約4分の3は電池メーカーによるもので、同産業が資本集約的であることを反映している。同リポートによれば、寧徳時代新能源科技(CATL)、遠景科技集団(エンビジョングループ)、国軒高科(ゴーション・ハイテク)といった大手電池メーカーは、高い輸送コストや現地調達要請を背景に、テスラやBMWなど既存顧客に追随する形で国外進出を進めている。
同リポートは、国外プロジェクトはコストが高く、建設期間も長いうえ、規制や政治的リスクも大きいと指摘。国外で発表されたEV製造プロジェクトの完成率は25%と、国内の45%と比べ低水準にとどまるとしている。
実際に中国のEVメーカー、比亜迪(BYD)は先月、メキシコで計画していた大規模工場の建設を棚上げした。地政学的緊張に加え、トランプ米大統領の貿易政策による不確実性を理由に挙げた。
ロジウムによれば、国内プロジェクトは着工が早く、建設も迅速だ。中国の電池工場は通常3-12カ月で着工するのに対し、国外では10-24カ月を要する。
一方、中国企業は技術移転や雇用喪失、産業空洞化を懸念する当局への対応も迫られており、対外投資の規制強化につながる可能性もある。
原題:China EV Sector Invests More Abroad Than at Home for First Time(抜粋)
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