米ニューヨーク市マンハッタン中心部で先週、暗号資産(仮想通貨)関係者が集まり、ビットコインを超える新たな金融時代の到来を宣言した。

ちょうどその数日前、イーサは6月以降で約75%上昇し、過去最高値に迫っていた。集まった業界幹部らの目的は、イーサが単なる投機的資産ではなく、将来の金融システムの中核となる存在だと、金融業界関係者を説得すること。企業の財務部がイーサを保有することでその構想が加速するとも訴えていた。

登壇したビットマイン・イマーション・テクノロジーズのトム・リー会長は、イーサリアムはビットコインとは異なり、プログラム可能な台帳であり、「スマートコントラクト」により銀行を介さずに取引、利払い、融資管理などが実行できると強調。「イーサリアムは、ウォール街と人工知能(AI)が融合する場所になる」と語った。同社はおよそ60億ドル(約8900億円)相当のイーサを保有している。

しかし、イーサリアムには課題もある。高速かつ低コストなソラナなど競合勢との競争が激化しているほか、熱心な投資家の新規確保も十分ではない。そのため、リー氏やイーサリアムの共同設立者ジョセフ・ルービン氏は、企業の財務部による保有が需要に関する問題の構造的な解決策になり、価格を下支えするとみている。

金融サービス関連企業の間では、独自のブロックチェーン(分散型台帳)インフラを構築する動きも出ている。ステーブルコイン発行元のサークル・インターネット・グループは、手数料を削減し顧客を囲い込む自社ネットワークの構築を進めており、イーサリアムが推進する共有型インフラモデルが排除される可能性もある。ストライプも同様の動きを見せているとされる。

企業保有による価格押し上げの戦略は、マイケル・セイラー氏が推進するビットコインの保有モデルを踏襲している。セイラー氏が率いるストラテジー(旧マイクロストラテジー)のビットコイン保有額は720億ドル相当に上る。ただ、セイラー氏の戦略はビットコインの急騰と重なっており、イーサが同様に企業保有による成功を再現できるかどうかは不明だ。

一方、イーサリアムの支持層は現在、銀行の調査部門から政界関係者にまで広がっている。トランプ大統領の一族が関与する分散型金融(DeFi)ベンチャー、ワールド・リバティー・ファイナンシャルは今年、数百万ドル相当のイーサ購入を開示した。トランプ大統領の息子、エリック氏もイーサの値上がりを公然と称賛している。金融業界では、スタンダードチャータード銀行が年末時点のイーサ価格見通しを従来の4000ドルから7500ドルに上方修正。アーク・インベストメント・マネジメントも長期見通しを引き上げている。

ニューヨーク市内で開かれたイーサのイベント(8月12日)

原題:Ethereum’s Big Backers Unleash Billions to Push Into Wall Street(抜粋)

--取材協力:Vonnie Quinn.

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