(ブルームバーグ):シンガポールのウォン首相は、世界的な保護主義台頭や人工知能(AI)がもたらすリスクが高まる中で、国民の雇用確保を政府の最優先課題とする方針を表明した。
ウォン氏は17日に毎年恒例の政策演説を行い、米中対立の影響やトランプ米大統領による関税戦争、新技術による雇用不安を最大の課題と位置づけ、「次の章は混迷と動揺の世界情勢の中で幕を開ける」と語った。
同氏は与党・人民行動党(PAP)が圧勝した5月の総選挙後、初めての重要演説で、貿易に依存する経済の強化と社会的セーフティーネットの拡充、一部国土の再開発、住宅建設を進める方針を示した。

選挙戦中は、世界的な成長減速や保護主義台頭の中で安定を維持する必要性を訴え、米関税措置の影響を含む経済ショックから国民を守るにはPAPが最も適任だと主張していた。
ウォン氏(52)はこの日の演説で、「われわれの究極の経済戦略は雇用にほかならない。これが最優先課題だ」とし、「シンガポール国民が新しい雇用機会を得られるよう、さらに支援する」と語った。
ウォン政権下でPAPは社会保障政策を拡充し、同国初の失業給付を導入したほか、食料や公共料金、教育関連の補助金に多額の予算を充ててきた。
ウォン氏は、特に中小企業がAIを効果的に活用できるよう、新たな職業マッチング制度や大学新卒生向け研修プログラム創設を発表した。
さらに、現在の外部環境の変化は一時的なものではないとして、経済戦略の見直しを表明。競争力維持やグリーンエネルギーの活用、国内企業の海外市場進出支援などの戦略を再検討するとした。
シンガポール政府は先週、今年の成長率見通しを5月時点の0-2%から1.5-2.5%に引き上げた。新たな米関税発動を見越した企業の輸出前倒しや、貿易を巡る懸念の後退などを背景に1-6月(上期)の経済成長が予想を上回ったことが主因だ。
原題:Singapore Prioritizes Jobs Amid Fragmenting World, Rise of AI(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.