トランプ氏に首都ワシントンを掌握する力はあるのか－QuickTake

（ブルームバーグ）：トランプ米大統領は11日、首都ワシントン（コロンビア特別区）の警察を連邦政府の直接管理下に置き、犯罪とホームレス問題への対策として州兵を展開させると述べた。

さらに首都ワシントンを連邦政府の管理下に置く意向も示したが、トランプ氏の権限には制限がある。完全な掌握の実現には連邦議会の承認が必要だ。

首都ワシントンとは

米国憲法は、連邦政府の本拠地を「特別区（10マイル（約16キロメートル）四方を超えない範囲）」と定め、連邦議会が「あらゆる面で排他的な立法権を行使する」と規定している。

米国憲法の制定者の１人だったジェームズ・マディソンによれば、特別区を設けた目的は、特定の州に連邦政府が属することで過度な権力を持つことを防ぐためだった。

首都は1800年にフィラデルフィアから、当時のワシントン市に移された。現在、約70万人が暮らすこの首都は「首都ワシントン」あるいは「コロンビア特別区」として知られている。

トランプ氏が首都ワシントンで取った措置とは

トランプ氏は11日、約800人の州兵を派遣し、首都ワシントンの警察の指揮を掌握すると発表した。これは、数十年前の法律に定められた非常時の権限によって一時的に可能となる措置だ。

トランプ氏は、ギャングや麻薬密売人、犯罪組織に対する取り締まりを即時実施すると表明した。また、10日には自身のＳＮＳ「トゥルース・ソーシャル」に「ホームレスらは直ちに立ち退かねばならない。滞在場所は提供するが、首都からは遠く離れた場所になる」と投稿した。

５日には同じくトゥルース・ソーシャルで、地元当局が犯罪に一段と対応しなければ首都ワシントンを連邦政府の管理下に置くと警告している。これに先立ち、同地域で発生したカージャック未遂事件で、トランプ政権の政府効率化グループに所属していた元著名メンバーが負傷していた。

トランプ氏は首都ワシントンの治安が「完全に制御不能」に陥っていると述べているが、地元警察のデータによると、同地域の凶悪犯罪は過去２年間で減少しており、米司法省は同地域の凶悪犯罪が2024年に30年ぶりの低水準を記録したと報告している。

首都ワシントンの掌握は可能か

首都ワシントンの完全な掌握は単純ではない。首都ワシントンは連邦議会が1973年に制定した「ホームルール法」の下で運営されており、住民は市長と市議会議員を選出できる。市長は警察トップを任命・罷免する権限を持ち、市議会は連邦議会の承認を前提とした予算の審議・可決を行う。また、市議会が可決した条例は連邦議会によって覆される可能性もある。

ホームルール法を無効化するには連邦議会の承認が必要であり、上院で60票を確保しなければならない。現在、共和党は上院100議席中53議席を占めている。