中国当局は、米国の輸出規制に準拠しつつ中国向けに設計されたエヌビディア製のAIアクセラレータ「H20」製品について、特に政府に関係する目的で使用を控えるよう新たな指針で中国企業に求めた。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

トランプ米大統領は、エヌビディアがH20の中国売上高の15%を米政府に提供すると11日の記者会見で発言。関係者によると、AMDも「MI308」の売上高の15%を提供する。しかし、中国当局が同国企業に購入を控えるよう迫る状況が明らかになり、新たな問題に両社は直面せざるを得ない。

この報道を受け、12日の株式市場で中国の半導体株が買われ、香港市場では華虹半導体が5.4%、中芯国際集成電路製造(SMIC)が5%、それぞれ上昇。上海市場では中科寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)が値幅制限上限の20%高となり、上場来高値。海光信息技術は2.1%上昇した。

AIアクセラレータは、AIアプリケーションの学習・推論処理の高速化をサポートするハードウエアで、中国のスーパーコンピューターへの使用・転用を懸念する米政府は今年4月以降、H20を対中輸出規制の対象とした。しかしその後方針を転換し、7月には対中輸出を許可するとエヌビディアに伝えていた。

 

慎重な扱いが必要だとして関係者が匿名を条件に語ったところでは、中国当局は過去数週間にわたり、性能を制限して設計されたH20の使用をやめるよう求める通達をさまざまな企業に送付した。

関係者によれば、中国当局の新たな指針は、政府向けのほか、国有企業や民間企業による国家安全保障関連の業務にH20製品を使用することに強く反対している。

今回のいずれかの通達がアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)製のMI308に具体的に言及しているかどうかは不明だが、関係者の1人によると、同社製のAIアクセラレータ製品にも影響が及ぶという。AMDも米当局から対中輸出許可の方針が伝えられていた。

AMDはコメントを控えた。エヌビディアは「H20は軍事用製品でも政府インフラ向けの製品でもない」と発表資料で説明。中国は国内半導体チップの十分な供給があり、「政府業務向けに米国製の半導体チップに依存したことはなく、これからも依存しないだろう」と認識を示した。

中国当局は、エヌビディア製AIアクセラレータ「H20」製品について、特に政府に関係する目的で使用を控えるよう中国企業に求めたと事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

国内半導体チップの技術開発に力を注ぐ中国は、西側企業が製造した製品から国内製品に乗り換えることを中国企業に望んでいる。

さらにエヌビディアは強く否定しているが、同社製の半導体チップが位置追跡や遠隔シャットダウン機能を備えていないか中国当局は不安視する。トランプ政権の当局者は、規制対象部品の対中輸出を阻止する目的で位置追跡機能を利用する可能性を積極的に検討しており、米議会では先端AI(人工知能)半導体の位置確認を義務付ける法案が提出された。

原題:China Urges Firms Not to Use Nvidia H20 Chips in New Guidance、Chinese Chipmakers Jump as Authorities Give Guidance on Nvidia(抜粋)

(第3段落に中国半導体株の動きを加えます)

--取材協力:Yanping Li.

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