(ブルームバーグ):12日の日本市場では日経平均株価が史上最高値を更新した。米国の関税政策を巡る不透明感が後退したほか、連休中に米大手テクノロジー株への買いが強まったことや為替の円安が追い風となった。円相場は1ドル=148円台前半に下落し、債券も下落した。
日経平均の終値は4万2718円17銭と、昨年7月に付けた過去最高値(4万2224円02銭)を上回った。トランプ米大統領が中国との関税休戦を90日延長したことに加え、先週末に米政権の高官が対日関税の上乗せ是正の発表に向けて最終調整していると明らかにし、世界景気や企業業績への懸念が和らいだ。
野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは、関税交渉が決着し日本株は「業績の先行きに明るさが戻り買いやすくなっている」と指摘。海外比での出遅れを見直す動きが海外投資家中心に強まっており、時価総額上位銘柄で構成するTOPIXコア30指数などの良好なパフォーマンスに表れていると述べた。
株式
株式は大幅高。関税懸念の後退に加えて底堅い企業決算や為替の円安も好感され、半導体などの人工知能(AI)関連銘柄や銀行、情報・通信、自動車を中心に買われた。市場では底堅いグローバル景気や来月の米利下げへの期待から海外投資家の買いが入っているとの声があった。
ニッセイアセットマネジメントの松波俊哉チーフアナリストは、関税交渉で「日本は最悪のシナリオを回避した」と話す。また国内の政局は、次の自民党総裁が誰であれ「財政出動をせざるを得なくなっている」と語り、内需系の株価は引き続き小じっかりとなりやすいとの見方を示した。
日経平均は一時1179円23銭(2.8%)高の4万2999円71銭まで上昇したが、中国当局が中国向けに設計されたエヌビディア製のAIアクセラレータ「H20」製品について、使用を控えるよう新たな指針で中国企業に求めたとの報道を受けて上げ幅を縮小した。
為替
円相場は1ドル=148円台前半に下落。米国の関税政策を巡る不透明感が後退してドル買いが入った。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、米中の関税休戦延長に加えて株の大幅高によるリスクオン、仲値に向けた実需の買いでドルはしっかりだと述べた。12日に発表される7月の「米消費者物価指数(CPI)に向けた持ち高調整と、米雇用統計や米連邦準備制度理事会(FRB)理事候補にミラン氏が指名されたことでドルが売られた反動も出ている」と言う。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、CPIが「市場予想を上回れば金利上昇、ドル買いとなる」とした上で、米利下げがメインシナリオになっているため、ドルは149円台に上昇してもその後は上値が重くなりそうだとみている。
債券
債券は下落。日本の連休中に米長期金利が上昇した流れを引き継ぎ、売りが優勢だった。日本銀行の利上げ観測や財政拡張懸念も重しになった。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、夏休みで市場参加者が少なく、大きな方向感は出にくいと語る。13日の5年債入札は「水準的に問題はなく、無難から強めの結果になる」と予想する。
金利スワップ市場では年内の日銀の利上げを5割強織り込んでいる。SMBC日興では来年1月の利上げを想定しているが、田氏は12月と1月で「ほぼ五分五分」とみている。
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--取材協力:長谷川敏郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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