裸足の10歳少年「ありがとう」 その直後に起きた悲劇

アンソニー・アギラーさん
「彼は10歳でした。両親も兄弟も一緒ではなく、たった一人で来ていました」
「彼は家からこの場所まで8キロも歩いて来ました。靴も履いておらず、水も持たず、ズボンも紐で腰にくくりつけられていました」

地面に落ちていた物資を手にしたアミール君は、アギラーさんに気が付き、近寄っていきました。

アンソニー・アギラーさん
「怪我をしているのかもしれない、両親を捜しているのかもしれない、もっと食べ物が欲しいのかもしれないと思いました。すると彼は手を差し出し私の仲間の手を握り、それから私の手を握りました。そして私たちの手にキスをして、額に当てました」

「彼は何かを求めるわけでも、不満を言うわけでもありませんでした」

「彼の手はただの骨と皮だけでした。爪は飢餓のため完全に乾燥し、脆く割れていました。体は崩れ落ちそうなほどでした。栄養失調で目の下にはくまができていて、脱水症状で皮膚が黒くなっているのが分かりました」

「彼は私を見て手を伸ばし、鼻を近づけ、額にキスをしました。そして私を見て英語でこう言ったのです、『ありがとう』と。その後、持っていた米の袋と豆をいくつか拾い上げ、群衆の中へと歩いて戻りました」

「そして彼が群衆と共に去った時、イスラエル軍は、その方角に向けて発砲していました」

「撃たれて地面に倒れた人たちがいました。アミールもその一人でした。10歳の少年が、イスラエル軍の機関銃から銃弾を受けたのです。アミールは地面に倒れ込み、動かなくなっていました。現場ではそれが“普通”のことでした」

GHFは、アギラーさんの証言について「虚偽を広める行為だ」とする反論声明を発表。私たちはGHFに取材を申し込みましたが、回答はありませんでした。

アギラーさんは、このままイスラエルとGHF主体の人道支援が続けば、ガザ住民のさらなる犠牲が増えると強い危機感を示しています。

アンソニー・アギラーさん
「もしそうなったとしても、誰も『知らなかった』と言い訳することはできません。私たちはすでに『知っている』のです。今この時に行動を起こして防がなければ、その命の責任は、ただ傍観しているだけだった私たち全員が負うことになるのです」