1.結果の概要:雇用者数が市場予想を下回った一方、失業率は市場予想に一致

8月1日、米国労働統計局(BLS)は7月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+7.3万人の増加(前月改定値:+1.4万人)と+14.7万人から大幅に下方修正された前月を上回ったものの、市場予想の+10.4万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を下回った。

失業率は4.2%(前月:4.1%、市場予想:4.2%)と前月から+0.1%ポイント上昇した一方、市場予想に一致した。労働参加率は62.2%(前月:62.3%、市場予想:62.3%)とこちらは前月から▲0.1%ポイント低下し、横這いを見込んだ市場予想を下回った。

2.結果の評価:ここ数ヵ月で雇用の伸びが大幅に鈍化

事業所調査の非農業部門雇用者数(前月比)は7月が市場予想を下回ったほか、後述するように過去2ヵ月分が▲25.8万人の大幅な下方修正となった。この結果、過去3ヵ月の月間平均増加ペースは僅か+3.5万人と下方修正前に示されていた4月~6月平均の+15.0万人から急減し、1ヵ月前に想定されていた状況から一変した。また、24年5月~25年4月の月間平均増加ペースの+15.0万からここ数ヵ月で雇用の伸びが大幅に鈍化したことが示された。

また、家計調査では労働参加率が3ヵ月連続で低下し22年11月以来の水準となるなど労働力供給の低下が顕著となっている。これは外国生まれの労働力人口が25年3月をピークに4ヵ月連続で減少していることにみられるように、トランプ政権による厳格な移民政策に伴う移民流入人口の減少を反映しているとみられる。

一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.3%(前月:+0.2%、市場予想:+0.3%)と前月を上回った一方、市場予想に一致した。

前年同月比は+3.9%(前月改定値:+3.8%、市場予想:+3.8%)と+3.7%から上方修正された前月、市場予想を上回った。

このようにみると、7月の雇用統計は雇用者数に関して6月の雇用統計が発表された時点で示されていた堅調な雇用増加との評価を一変させる内容だったと言えよう。また、失業率は依然として24年5月以降、4.0%~4.2%のレンジに収まっているものの、労働需要が大幅に低下する中で移民労働力の減少などに伴う労働供給の減少の上に立った危うい均衡となっている。関税政策の影響はこれから益々顕在化するとみられることから、労働市場はさらに軟調となることが予想される。