4日の日本市場では株式が大幅に下落した。雇用統計を受けて米国経済の不透明感が強まり、債券は上昇(金利は低下)、円は堅調に推移した。

日経平均株価は一時900円を超える下げで節目の4万円を割り込んだ。1日発表の米雇用統計が労働市場の軟化を示し、経済の先行き懸念を強めた。銀行株が安い一方で内需関連は底堅く、指数は下げ幅を縮めて取引を終えた。米早期利下げ期待の復活で金利は低下。前週末に大きく売られたドル・円はトランプ米大統領の労働統計局(BLS)局長解任もあり円が堅調だった。

トランプ関税の行方が見え始めてボラティリティー(変動率)が落ち着いていた金融市場は、一転して激しい値動きとなった。9月の米利下げ予想が9割前後に急上昇しており、世界市場へのインパクトは大きい。

野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは、米労働市場の急減速を受け金融市場はリスクオフになっていると4日付リポートに記した。12日発表の米消費者物価指数(CPI)が上振れれば一段の株価調整の可能性もあり、物価動向に注目が集まりそうだとしている。

株式

株式は大幅に下落。日経平均は節目の4万円を約2週間ぶりに割り込む場面があり、TOPIXを含めて一時2%超安と、4月11日以来の日中下落率を記録した。米雇用統計が予想を下回ったことで景気懸念が強まり、投資家心理を冷やした。これにより日本銀行による追加利上げへの期待も後退した。

銀行株が大幅安。年内利上げとの見方が後退して売り圧力が強まった。円高・ドル安基調が重しとなり、電気機器、機械、自動車といった輸出関連株も下げた。

フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は「米国の雇用データを見ると投資家は景気後退が来るかどうかではなく、すでに入っているのではないかと考えているだろう」と述べた。これが為替や株式市場のセンチメント悪化に表れているとした。

午後の取引では任天堂の上昇を受けて下げ幅を縮小した。任天堂は決算で発表した家庭用ゲーム機「スイッチ2」の販売好調を受けて買われた。CLSAのアナリスト、ジェイ・デフィバウ氏はリポートで、スイッチ2の販売は市場予想を上回り、「需要は今後も堅調に推移する」との見方を示した。

米カールソン・キャピタルのポートフォリオマネジャー、デビッド・ファンドリッチ氏は「昨年の繰り返しにならなければいいがと思っている」と語った。「昨年はキャリートレードの巻き戻しで株が急落し円が大きく上昇した。今年はトランプ関税という複雑な要因が加わり、乗り越えるのは容易ではない」と話し、変動率が大きい相場が続くとみている。

債券

債券は雇用統計を受けて米長期金利が大幅低下した流れを引き継ぎ、買われた。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、雇用統計で景気減速が意識され、ショートカバー中心に買いが先行したと語った。同時にこの統計は集計の問題で大きな誤差が出ており、単月の信頼性もあって今回の結果で景気懸念が強いとは言えないとも指摘した。

りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは「雇用統計が弱い内容となり米経済を確認する作業が増えた。1回で判断できないとすれば来月の雇用統計を見ないと分からず、今月はよほどのことがない限り金利は上がりにくくなった」と語る。

また「国内市場では今まで10年債は1.6%で買えれば良いと思っていたが、1.45-1.55%のレンジだと1.5%は冷静に見直すと買って良い水準ではないか」と話した。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、日銀の利上げが難しくなっていると市場が考えた場合、金利は「2年、5年債中心に下がっていくだろう」とみていた。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

円相場は1ドル=147円台で堅調に推移。前週末に一時150円台まで下落して約4カ月ぶりの安値を付けた後、米利下げ観測が強まり、日米の金利差縮小を意識したドル売り・円買いの流れになった。

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「雇用統計後の円高という昨夏の展開再現への市場警戒が大きく高まることが予想され、目先はドル・円、ユーロ・円ともに下振れを警戒すべき」と指摘。米労働統計局長の解任でドル離れへの警戒が再浮上する可能性があるとした。

ただ、円は特に仲値決済に向けた午前10時前に上げ幅を縮小した。

東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、ドル・円は売られ過ぎていたためショートカバーが入っているとの見方を示した。雇用統計の弱さは「テクニカル的な部分が大きかったのかもしれないという見方が広がって市場が落ち着きを取り戻せば、ドル・円は緩やかな上昇基調に戻るのではと思っている」と話した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:間一生、横山桃花、清原真里、近藤雅岐、長谷川敏郎.

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